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第61話

鼻血が出してしまった望さんと一緒に、浜辺へ上がる。 パラソルの下に座ってもらい、休んでもらった。 「大丈夫ですか?」 「だ、大丈夫だ……少し休めば治まる」 確かに少しずつ治まってきたようだけど、心配だ。 「僕、もう少しそばにいますね」 「え!?いや、いい……佳純は海で遊んできてくれ」 「……望さんのこと、心配なんです」 海に来る前から、少しおかしかった。 体調が悪かったのかもしれない。 「佳純……。大丈夫だ。少し、その興奮しただけで……」 「興奮?……あ、そんなに海が好きだったんですか?」 「え、あ、いや……」 なかなか休養も取れないだろうし、海にくるのすごく楽しみにしてたんだ。 「少し落ち着いたら、また海で遊びましょうね」 「あぁ……そうだな」 望さんがティッシュで鼻血を押さえながら、笑いかけるとビーチボールがすさまじい勢いで、望さんの顔面を直撃した。 「……っ!!」と声にならない声を望さんは上げた。 てんてん……とビーチボールが砂浜に転がる。 「大丈夫ですか!?望さん!」 「キャー!社長!ごめんなさい!!」 受付の女の子二人が社長の傍に駆け寄る。 二人とも顔が真っ青だ。 そりゃそうだよね……社長に顔面サーブあてちゃったんだもんね。 「あちゃー、ごめんね、社長」 小野くんも駆け寄ってきた。 どうやらあの凄まじいサーブは小野くんのものだったらしい。 「まさかそんなところで寝てるなんて思わなくってぇ」 舌を出して、可愛子ぶってるけど……望さんすごく怒ってるよ!望さんの背後から炎が出てるよー! 「小野……てめぇ……」 「ののの望さん!僕、ちょっと別荘に戻りたいんですけど!一緒に来てもらえませんかっ?」 このままだと雰囲気が悪くなっちゃう。 僕はあわてて望さんにお願いした。 「?あ、あぁ……」 僕は鼻の頭を真っ赤にした望さんと別荘へ戻った。 〈小野目線〉 あーあ、全く。 社長の様子がさらにおかしくなった。 おかしくなったのは、佳純さんの水着姿を見てからだ。 裸とか言っても、上半身だけなんだどな。 でも、好きな人だとやっぱり意識するもんなのかな。 よく分からん。 だけど、佳純さんの体に触れただけで鼻血ふくって重症すぎる。 思わず吹き出しそうになった。 それが功を奏して、社長は佳純さんに看病してもらっている。 それを横目出みていると、受付の女の子たちが浜辺で俺を呼んでいた。 「じゅんくーん!」 「ビーチバレーしよー!」 他の男性会社員を交えて、三対三でビーチバレーをするらしい。 佳純さんは社長と一緒にいるし、まぁいっか。 「いーよー!」 そのまま浜辺に上がり、ネットが張ってある所まで歩いた。 浜辺って結構足取られるんだよなぁ。 そう思いつつも、運動神経抜群の俺は連戦連勝だったんだけどね。 目の端に見える社長と佳純さん。 あーあの社長のもだもだした様子が、時々すごくイライラする……。 さっさとくっつけばいいのになぁ。 二人っきりになれば、ちょっとは進展するか? 俺はあることを思いついた。 「じゅんくんからサーブだよー」 「オッケー!」 ちょうどよかった。 サーブは俺からだ。 俺は力いっぱいビーチボールを叩き込み、ほんのちょっと手の角度を変えた。 バァンッ!と凄まじい音と共に社長の顔面にビーチボールがクリーンヒットした。 おお、意外とうまく当たったな。 案の定、烈火のごとく社長が怒ってたけど、社長の天使である佳純さんが予想通り俺と社長を引き離してくれた。 ちょっとは進展させてくださいよ、社長。

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