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第62話

望さんと一緒に別荘に戻ってきた。 いつの間にやら、望さんの鼻血は止まっていたが、顔はまだ赤い。 「大丈夫ですか?」 「もう、大丈夫だ……。佳純は海に戻った方がいいんじゃないか?せっかくここまで来たんだ」 「僕もちょっとここで休みます。昨日は眠れなかったから……」 望さんのことも心配だし……って言うと、大丈夫って返されるかもしれないから、言わない。 いつもの望さんじゃない感じがして、ちょっと心配だ。 僕か本当に困った時、助けれくれたのはいつだって望さんだった。 だから、今度は僕が助けになってあげたい。 「望さん、シャワー浴びますか?」 「え、シャワー……?」 「海の中に入ったし、少し体を流した方がいいかなと思って」 「あ、あぁ……そうだな……」 望さんは僕の言葉に頷きながらも、視線はあちこちにいっている。 本当に具合が悪いんじゃ……と心配になる。 「良かったら、先に望さんシャワー浴びてきてください。僕はリビングで待ってるので」 ゆっくりシャワーを浴びたら、ちょっとは気分が違うかもしれない。 「……そうだな。うん、先にシャワーを浴びさせてもらう」 「はい!ごゆっくり」 僕はそれだけ伝えると、リビングに向かった。 誰もいないリビングにクロスだけがウッドデッキに繋がる大きな窓の前で日向ぼっこをして寝ている。 「クロス」と僕が呼びかけると、人懐っこいクロスはすぐに僕の足に擦り寄ってきた。 うん、これはかなり可愛い。 僕はクロスを抱き上げて、一緒にウッドデッキに出た。 かなり広いウッドデッキは屋根もついてて、白いビーチベッドが置かれていた。 僕はそこに寝転んでみると、クロスも僕のお腹の上に丸まるようにして眠った。 風が海の音と匂いを届けてくれて、ゆったりとした時間が流れている。 こんなのんびりとした時間の中で過ごすの久しぶりだなぁ……。 うつらうつらしながら、僕は眠りの中に落ちていった。 <獅子尾目線> 「はぁ……」 俺はシャワーを頭からかぶりながら、大きくため息をついた。 佳純の裸を見て、鼻血を出し、あまつさえ…… 『望さん、シャワー浴びますか?』 この言葉に俺は、一緒に浴びるのかと思って、思わず下半身が反応してしまった……。 バレていなかっただろうか。 バレたら、いくら優しい佳純でも、ドン引きされそうだ。 シャワーを浴び、服に着替え、佳純を探す。 リビングに行くと、窓が少しだけ開いていた。 「佳純」 腹の上にクロスを乗せて眠る佳純がいた。 長い睫毛が伏せられ、柔らかい唇は少しだけ開いて寝息が漏れている。 肌も白くて、柔らかそうだ……っていうか柔らかかった。 あどけない寝顔は、初めて会った時の幼い顔が思い出される。 「佳純……」 もう一度、呼びかけるも返事はない。 昨日は眠れなかったと言ってたからな。 夏の日差しが差し込む中、そっと顔を近づける。 「佳純、好きだ……」 佳純の全てを独り占めしたい。 まだ見ぬ夢に思いを馳せて、少しだけ軽く唇に触れるだけのキスをした。

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