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第19話

レストランはとても雰囲気のいいイタリアンレストランで、ここも望さんの会社が出資をしたところらしく、オーナーさんが直々に席に案内してくれた。 窓際の席で、レストランの庭がよく見える良い席だった。 「すごく、雰囲気の良い店ですね」 「たまに食事に来る。パスタがおいしい」 「そうなんですか~」 メニューをぺらりと捲る。 うっ、カルボナーラ2000円!? 結構するな……。 一番安くて、トマトとチーズのパスタ1500円。 普段イタリアンなんて食べないから分からないけど、こんなにするものなの? お金は足ると思うけど、まだ節約しなきゃだし……。 一番安いパスタにしようかな。 「佳純。奢るから、たくさん食べてくれ」 「えっ、駄目ですよ!僕ちゃんと払いますから!」 『値段が高い』っていうの顔に出てたかな……。恥ずかしいな。 「いや、佳純の貴重な休みを俺にくれたから、これくらいさせてほしい」 「それを言うなら、僕の方こそ、あんな素敵な展覧会を見せてもらって、申し訳ないくらいなのに……。それに、専属契約だってしてもらって、本当に助けてもらって有り難かったんです。このまま、借金取りが来てたら、本当にお店をたたむつもりだったんです」 あんな怖い思い、もうしたくない。 花屋なんて続けていけないと思っていた。 「佳純が作る花束が、好きだ。前にも言ったが、知らない花がたくさんあって、君が教えてくれる度に世界が広がっていく。だから、佳純の花が好きだという気持ちに出資をした。佳純の選んだ花がたくさんの人に届くように」 望さんの真剣な眼差しに、僕はどきりと胸が高鳴った。 男の人なのに、そんな目で見られると胸が切なくなってくる。 そして、そんな風に言ってもらえて、すごく嬉しかった。 「とにかく、ここは奢るから、食べてくれ」 「でも……」 「……じゃあ、一つだけ条件をつける」 条件? 「今度、佳純の手料理を食べさせてくれ」 「手料理、ですか?」 望さんはこくりと頷いた。 「小野が、美味しかったと褒めていた。だから、俺も食べてみたいと思って……だめか?」 「いや、ダメじゃないですっ。ただ、そんなすごい料理作れる訳じゃないし、口に合うか分からないし……」 「構わない。佳純の手料理が食べたいんだ」 望さんがあんまり真剣な顔でお願いしてくるから、思わず下を向いてしまう。 断るつもりなんてないけど、そんな風に真面目にお願いされたら、断れないじゃないですか! 僕は心の中で望さんに文句をいってみる。 「分かりました。望さんの好きなもの作ります」 「楽しみにしてる」 「じゃあ、うんと高いもの頼んじゃいますよ?」 「構わない。たくさん食べてくれ」 楽しい。 誰かとお喋りしながら、ご飯を食べるなんて久しぶりだ。 朝のギクシャクした雰囲気もなくなって、望さんと本当に仲良くなれたような気がする。

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