19 / 79
第19話
レストランはとても雰囲気のいいイタリアンレストランで、ここも望さんの会社が出資をしたところらしく、オーナーさんが直々に席に案内してくれた。
窓際の席で、レストランの庭がよく見える良い席だった。
「すごく、雰囲気の良い店ですね」
「たまに食事に来る。パスタがおいしい」
「そうなんですか~」
メニューをぺらりと捲る。
うっ、カルボナーラ2000円!?
結構するな……。
一番安くて、トマトとチーズのパスタ1500円。
普段イタリアンなんて食べないから分からないけど、こんなにするものなの?
お金は足ると思うけど、まだ節約しなきゃだし……。
一番安いパスタにしようかな。
「佳純。奢るから、たくさん食べてくれ」
「えっ、駄目ですよ!僕ちゃんと払いますから!」
『値段が高い』っていうの顔に出てたかな……。恥ずかしいな。
「いや、佳純の貴重な休みを俺にくれたから、これくらいさせてほしい」
「それを言うなら、僕の方こそ、あんな素敵な展覧会を見せてもらって、申し訳ないくらいなのに……。それに、専属契約だってしてもらって、本当に助けてもらって有り難かったんです。このまま、借金取りが来てたら、本当にお店をたたむつもりだったんです」
あんな怖い思い、もうしたくない。
花屋なんて続けていけないと思っていた。
「佳純が作る花束が、好きだ。前にも言ったが、知らない花がたくさんあって、君が教えてくれる度に世界が広がっていく。だから、佳純の花が好きだという気持ちに出資をした。佳純の選んだ花がたくさんの人に届くように」
望さんの真剣な眼差しに、僕はどきりと胸が高鳴った。
男の人なのに、そんな目で見られると胸が切なくなってくる。
そして、そんな風に言ってもらえて、すごく嬉しかった。
「とにかく、ここは奢るから、食べてくれ」
「でも……」
「……じゃあ、一つだけ条件をつける」
条件?
「今度、佳純の手料理を食べさせてくれ」
「手料理、ですか?」
望さんはこくりと頷いた。
「小野が、美味しかったと褒めていた。だから、俺も食べてみたいと思って……だめか?」
「いや、ダメじゃないですっ。ただ、そんなすごい料理作れる訳じゃないし、口に合うか分からないし……」
「構わない。佳純の手料理が食べたいんだ」
望さんがあんまり真剣な顔でお願いしてくるから、思わず下を向いてしまう。
断るつもりなんてないけど、そんな風に真面目にお願いされたら、断れないじゃないですか!
僕は心の中で望さんに文句をいってみる。
「分かりました。望さんの好きなもの作ります」
「楽しみにしてる」
「じゃあ、うんと高いもの頼んじゃいますよ?」
「構わない。たくさん食べてくれ」
楽しい。
誰かとお喋りしながら、ご飯を食べるなんて久しぶりだ。
朝のギクシャクした雰囲気もなくなって、望さんと本当に仲良くなれたような気がする。
ともだちにシェアしよう!