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番外編:猫島佳純の休日 その1
今日は水曜日。
フラワーショップ猫島は定休日だ。
休日の日だから、いつもよりゆっくり起きようと思うんだけど、結局朝の6時に目が覚めてしまう。
布団の中で、もぞもぞするけど、結局眠れないので、着替えて、顔を洗う。
身支度を整えて、朝御飯を作る。
ご飯と目玉焼き、味噌汁と……自分で漬けたキュウリの浅漬け。
これさえあれば十分。
「いただきます」
一人で食べる朝御飯もすっかり慣れてしまった。
慣れないと思ってたのに。
人間の適応能力って恐ろしい……。
黙々と朝食をとったあと、テレビを見て過ごす。
暇だ。
普段バリバリ仕事をしているからか、休みの日は何もすることがなくて、困る。
散歩でも行こうかな……。
たまには街で買い物もいいかも。
パーカーを羽織り、財布と家の鍵だけもって出掛けた。
バスに乗って、街に出てみた。
百貨店やお洒落なお店もたくさんあって、ウィンドウショッピングをするだけで楽しい。
「わぁ……この花瓶、キレイ」
雑貨屋さんにあった、陶器の花瓶に目を奪われていると、「おい、池ちゃん!それは偽物のパンだから食べようとしないの!」と聞き慣れた声が聞こえる。
雑貨屋さんの入り口で、小野くんが中学生くらいの男の子を引っ張っている。
「小野くん?」
「あっ佳純さんだっ!」
運命的~なんて言いながら、僕の傍までやってくる。
……男の子も引きずりながら。
「こんにちは。……その子は?」
「ちはっす!こいつは、池村 弥生 って言って、俺の同居人……って池ちゃん!レプリカのパン持ってきちゃダメでしょ!返してきなさいっ」
「このパン、硬い……。美味しくない」
無表情にパンをかじり続けている少年、池村くんは小野くんより10センチ以上背が低く、細身で小柄。髪型は黒の短髪で耳には小さなピアスが光っている。
「あーあー、歯形ついてんじゃん!怒られんの、いつも俺なんだからなっ!」
「じゃあ、いつもの要領で怒られてきて」
「池ちゃんのばかちんっ!」
そう言い返しながら、小野くんはレプリカのパンを店に返しに行った。
「あーあ……お腹すいたなぁ」
池村くんはポケットからビスケットを一枚取り出し、モグモグ食べ始める。
「池村くんは、朝何も食べてないの?」
「ううん。食べたよ。ただ、すぐ消化しちゃうみたいで……すぐお腹が減る」
「そうなんだ……大変だね」
池村くんはさらにもう一枚ビスケットを取り出し、かじった。
小野くんが「やっぱり怒られたー」と泣きながら帰って来た。
「小野くん……大丈夫?」
「大丈夫じゃないっす……佳純さん慰めてっ」
小野くんがふざけて抱きついてきたので、よしよしと僕は頭を撫でてあげた。
すると、池村くんが小野くんの服の裾をくいくいっと引っ張った。
「淳~。ビスケットなくなった」
「は!?お前、それお昼までの繋ぎっつったじゃん!」
小野くんと池村くんはどうやら昼食がまだみたい。
時間をみると11時半。
少し早いけど、お昼ごはんにちょうどいいかもしれない。
「良かったら、ご飯一緒に食べる?」
「いいんすか?」
「うん。適当にどこかでごはん食べよっか」
「やったー!佳純さんとご飯っ。社長に自慢しよーっと」
望さんに自慢って……自慢にならないと思うんだけど。
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