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第28話

パーティーの予定日が8月10日だから、三日前の8月7日に搬入しなければならない。 だから、僕の手元に8月6日に届くように手配した。 もうすぐ7月だから、1ヶ月あったら充分だ。 いつも取引をしているところだから、信頼してるし、安心だ。 カランカランという音が聞こえ、入り口を見ると高村さんが来てくれた。 「こんにちは」 「高村さん、こんにちは!」 最近は社長さん自ら来てくれることが多かったので、高村さんは久しぶりだった。 「なんだか、ここに来るのがご無沙汰になってしまったので、私が来てしまいました。花束とバラ一輪貰えますか?」 「はいっ」 このやり取りも久しぶりだ。 「お仕事、忙しかったんですか?あっ、パーティーの件ですか?」 「いや、それは松岡さんに任せてます。……私は別件で動いていまして」 獅子尾コーポレーションは式場だけじゃなくて、他にも色んな経営しているのだ。特に高村さんは有能な人だから、色んな所に顔を出したりしなきゃいけないんだろうな……。 「あまり無理しないでくださいね」 「ありがとうございます」 何でもないように笑う高村さん。 スマートに仕事をこなしちゃうんだろうな。 僕はそんなことを考えながら、季節の花をいくつか選んで花束にした。 ―――― 〈高村目線〉 最近、うちの会社にサイバー攻撃をかけてくる輩がいる。 誰かは大体分かっている。 会社の地下にコンピューター制御室という部屋があり、そこで会社のパソコンのセキュリティ、防犯カメラの画像管理、会社の建物のセキュリティを統括的に制御している。 普段はセキュリティ会社の人がある程度見てくれているが、今回は裏の仕事なため、池村くんに来てもらっている。 「池村くん、どうですか?」 コンピューター制御室には、山盛りの大きなラーメンが四つほどおいてあり、換気の利いてない部屋ににおいがこもっている。 私はそっと換気扇のスイッチを入れる。 「ん~……まぁ、ブロックはできてる。サイバー攻撃があったのは一回だけで、セキュリティの壁も一枚破っただけ」 「どこの誰か、分かりましたか?」 「海外のサーバーを経由してるけど、経由した先は日本に繋がってた。……天竜会でしょ」 ずずっとラーメンを池村くんはすする。 普通、海外のサーバーを経由されていたら、特定しづらいのだが、池村くんは独自にプログラミングなども開発できてしまう天才だ。ある程度の時間を与えれば、すぐに特定できてしまう。 おそらく、頭の回転が常人の倍以上なため、エネルギーがいるのだろう。 常人の倍以上の食欲で、それを補っているのだ。 「天竜会か……」 「最近、うちの内部でも何かおかしなことが起きてるっぽいよ」 「どういうことですか?」 池村くんはノートパソコンを取り出して、カタカタと素早くキーボードを叩いた。 「これ、この会社のパソコンね」 画面には、小さな四角が15個並んでいる。 経営部の部署内のパソコン15台を表しており、その内ひとつが黒く塗りつぶされている。 「この黒く塗りつぶされたパソコンから、無理やり情報を引き出そうとしている痕跡が出てきた」 「内部にスパイがいるということですか?」 「まだ、分からないけど……探ってみる?」 「お願いします」 池村くんはスープをごくごく飲み干すと、画面に向かい直し、素早くキーボードを叩き始めた。

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