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共に白髪が生えずとも

 毎年、この日が来ると思い出す。  お前と出会った日のことを。  まだまだ若かった俺は血気盛んで、大勢でプラカードや色とりどりの弾幕なんかを掲げて叫んでいたな。  そんな中に、お前はいた。  決して声を荒らげることも、拳を振り上げることもなく、ただ皆と足並み揃えて歩を進めていた。  一目惚れってやつだった。  今の俺はあの頃みたいに血の気も多くないし、こう言っちゃなんだが世間の目など気にならなくなってしまった。  お前と長く一緒にいて、そんなことどうでもよくなったから。  主張を声高に叫ぶこともなく、頭に血が上ることも無縁な、この穏やかな毎日のおかげで、随分と丸くなったもんだ。  丸くなったのは、性格だけじゃないんだけど。  お前の飯が美味すぎて、体がどんどん丸くなってきたじゃないか。そんなことを言えば、他の誰かに取られる心配が無くなるから嬉しい、なんてニヤニヤされた。  そんなお前は体こそ昔のままだが、頭部に変化が見られるよな。共に白髪が生えるまで、なんて言葉があるけど、白髪になる前に無くなってしまうんじゃないか?なんて、実はひそかに心配している。  ……本人には絶対言わないけど。  月日が経てば外見は変わっていく。それは避けようのないこと。でもお前を思う俺の気持ちは、雷に打たれたように恋に落ちたあの日から、変わっちゃいない。  お前もそう思ってくれてたらいいんだけど。

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