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通達

「智、今度の日曜ひまか?」  これといって予定はない。任務遂行の土曜日を経て僕らは日曜の遅い時間に起きだす。仕事をしたり本を読んだりする宮さんを横目に、僕は食べるものをつくり、本を読んで昼間のワインやコーヒーを楽しむ。どこかに出かける必要はまったくない。僕らは限りなくインドア派だ。 「特に予定ないですね」  重さんの横でコーヒーをすすっていたマスターが真剣な顔をしている。 「とも、スーパーリーマンの予定は?」  ハニーじゃなくていいのか。少しほっとするけれど、二人そろっていったい何事なのだろうか。 「何かあるとは聞いてませんけど。確認しますか?」 「時間つくってくれないかな」  何をそんなに言いにくそうにしているのだろう、マスターは。いつにもまして少し慌て気味だ。 「久、おまえ慌て過ぎだ。実はな智、4人で飯食いにいかないか?」 「4人……ですか?」 「そ、俺と久、智とハニーで」  重さんはハニーを譲らないようだ。さて、これはなにかのテストか。ミサキの離婚話以降、マスターと重さんの雰囲気が少し重いのには気が付いていた。でも、今ミサキが離婚したといっても僕の胸はざわめかないし、離婚の理由は僕であるはずもない。 「えええと。それはどういう?」 「ともが大丈夫だってことは俺達もわかっているんだ。わかっているんだが、安心したい。迷惑な申し出だってことは百も承知なんだが……」  珍しく言いよどむ重さんを見て、本当に二人が心配してくれているのが伝わってくる。そもそも事の起こりは僕がミサキとかかわったことで、重さんやマスターのせいでもなんでもないのにと思うと申し訳ない。僕に断る理由はない。 「かえって、すいません心配かけちゃって。そういう理由ならご一緒します」 「いいのか?断りいれなくて」 「大丈夫です、ちゃんと理由をいったら納得してくれると思いますから」  それに。僕はちゃんと宮さんを紹介したい。大事な人を大事な人達に。

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