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出会い 3
この出会いが僕の最初の一歩になった。加瀬陵として生き、ミサキを過去のものとしていく第一歩。
僕のことを自分のことのように考えて心をくだく朝倉。「別にいいんじゃないの~?」と背中をおす仁。何も言わないくせに、最後にはいつも肩を抱いてくれる重。
僕はこの3人によって救われた。親ですら見放した僕に彼らは価値を与えてくれたから。しっかり生きていきたいと真剣に考えるようになった。
未祐ちゃんが言った「自分の人生を生きたい」という言葉。この時の僕はそんなに明確に表現できなかったけれど、きっとそういう気持ちだったのだろう。だから一人になれる場所でがむしゃらに働いた。
そして他人から見れば歪で本物ですらないかもしれないけれど、僕は家族と呼べる存在を得ることもできたし、それが嬉しかった。もう帰っても大丈夫。
「仁?うまくいったよ。根回しなんかがあって、そのあとの辞令だろうから赴任はもう少し先になるけど」
「そっか、思惑通りだな。やったじゃん、陵」
「それで、ちゃんと朝倉や重にも説明しなくちゃいけないしね。今週末一度そっちに行こうかと。泊めてくれる?」
「いいよ~陵くん」
「ひさしぶりだね、それ」
「だね。僕だって全貌を知っているわけじゃなくて少しだけ話してもらったってだけだし。でも重と朝倉は全然だろう?」
「だからね、二人にちゃんと話をするためにも帰るよ」
僕は仁の言葉を待っているのに耳元には音しか流れてこない。
「仁?かけなおす?」
「……あ、いや大丈夫。あのさぁ、面倒じゃなかったら逢ってほしいヤツがいるんだけど」
僕に逢いたい人間なんかいるだろうか。まさかトモキ……そんなはずはない。
「残念でした、ともちゃんじゃないよ」
「そんなはずないだろうと思っていたところだよ」
「でもまんざら外れてもいないよ」
「で、誰?」
「ともちゃんの彼氏」
電話を切りそのまま背中からベッドに倒れこんで考える。
なぜ?どうして、トモキの彼氏が僕に逢いたがるのだろうか。もう4年くらい前のことだし、トモキが僕のことをひきずっているとは思えない。あのこは強い、僕なんかよりもずっと。
『潔い』これがトモキのイメージだ。20歳の頃僕は仁たちの横であやふやに笑みを浮かべる人間でしかなかった。美咲を生かそうとし続けるあまり、自分をなくしてフワフワしていた。
でもトモキは違った。目的をもって毎日を過ごし一生懸命だった。実際仕事ぶりをみたことはないし、ほとんど何も知らないけれど絶対間違っていない。
思い浮かんだかつての自分を思う。子供すぎた頃の別離がそうさせたのか、僕の境遇のなかに美咲しかいなかったからそうなったのか。
本当に、僕の時間は霞がかった夜空と一緒で、光輝くこともなく静かに流れていただけだった。
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