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落ち着かない二人
2:00まで任務をこなして二人で俺の部屋に帰ってきたものの、智は少しボーっとしているし、俺は俺で明日ミサキに会うことになっているので、落ち着かなくて当然だ。
考えても埒があかないと観念して仁さんに連絡した俺。『そうこなくっちゃね』と相変わらず楽しそうに、何かたくらみを潜ませた声が電話から返ってきた。
何をどう話せばいいのかさっぱり思いつかない。どうしたいのか?それだけを聞こうと思っている。
「智?なんかあった?」
「宮さんこそ、なんかあった?」
お互いに何かありまくりなのは百も承知だが、聞いてはいけない気がしているのも事実。智も同様だろう。
「ないとはいえないな。あきらかにおかしいだろ?俺」
「うん。地に足がついてないね、珍しく。でも宮さんこそ、僕だっておかしいのわかってるよね」
「うん、わかってる」
「宮さん、明日ヒマ?」
一瞬返答につまる。ヒマではない。でも一日いっぱいかかることはないだろう。1時間もあれば十分だ。ラッパ飲みをしているミネラルウォーターを智から横取りして一口飲む。
「夕方用事が一つあるから出かけるけど、あとは大丈夫だよ」
「マスターと重さんに、宮さんを紹介したいんだ」
横に座って手をつないでギュっと握る。正直うれしい。
「なんだか、嬉しいな」
「でもね、宮さん」
こっちをむいた智はなぜか暗い顔をしていて、少し不安になる。二人の合格基準には達していないのか、俺は。
「ことのおこりはミサキだから」
ギクっと肩が動かなかっただろうか。今この単語は俺の神経を高ぶらせる。
「ミサキの離婚の話からマスター達はいつも考え込んでいて。それで僕たちを見て安心したいんだって」
その気持ちは十分すぎるほど理解できる。俺だって安心したい。だからこそ明日ミサキに逢うわけで。
「七時くらいでもいいかな」
「うん。ごめんね宮さん」
「おいおい。どうした、あやまるようなこと、智はしてないだろ?」
握っていた手を離して抱き寄せる。智が向い合せに膝の上に座り俺に抱き着いた。
「本当は、こんな話が浮上する前に宮さんを紹介するべきだったのに。僕の大事な人ですって。もしそうだったら、今回のミサキ云々って話になっても、へえ~で終わったんじゃないかって。それを考えたらね、実は宮さんにもずっとそんな思いをさせていたんじゃないかって気が付いて。ひどく人でなしな人間だったなって」
俺達は無言で互いの体温を確かめるように抱きしめあう。俺はこれが一番大事、この存在がなければ意味がない
「大丈夫、ここに今智がいるから。それだけで幸せになれるから俺。頑張るよ」
よくわからない宣言のあと、智の頬が首筋にあてられた。
「うん。宮さんがニッコリ微笑んだら大丈夫だよ」
智が言っているのはマスター達のことだろう。ミサキは笑顔を浮かべたら手加減してくれるだろか。弱気になってどうするんだ!
この腕のなかの幸せを誰にも渡すつもりはない。絶対に誰にも。
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