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episode4_1
外に出ると、青かった空はもう赤く染まっていた。三十分もすれば辺りは暗くなる時刻だ。
李央は車通りのある道へ出ると、すぐにタクシーを捕まえ自宅へ戻った。
欠伸をしながらエントランスを通り、エレベーターで部屋に向かう。
シャワーを浴びて、丸一日寝てまた遊びにでも出ようと考えながら玄関を開けると、ポーチに李央の物ではない靴があった。李央はそれに気を止める事なく、真っ直ぐ寝室へ入っていった。
「不法侵入ですよー」
「どこ行ってた」
眉間に皺を寄せた臣が、ベッドに腰掛けていた。
李央と臣はお互いを束縛するでもなく、好きなときに、気が向いたときに、セックスするだけの関係のはずだが、臣はやたら李央につっかかり干渉する。
「遊んでただけ」
その度に返ってくる答えは一緒なのに。
もし、他の答えがあったとしても、李央は同じ答えを返すだけだ。
溜息をついた臣は、ジャケットを脱ごうとする李央の背中に声を掛ける。
「携帯はどうした」
「携帯なら・・・あ───」
スラックスのポケットから取り出した携帯の画面を見ると真っ暗。電池が切れていたようだ。
「貴央 が呼んでる」
その名前を聞いた瞬間、李央の動きがピタリと止まった。でもそれは一瞬の事で、脱ぎかけていたジャケットをまた羽織った。
「・・・兄さん帰ってきてるんだ」
「お前を連れてこいって俺に連絡があったんだよ」
「ふーん。臣は今でも兄さんの言いなりなんだね」
嫌味を言う李央に、臣は何も言い返せないでいる。
そんな態度にも苛ついた李央は舌打ちをして、足音荒く玄関に向かう。その後を追うように、臣も部屋を出た。
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