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episode4_2

「言いなりなのはお前の方だろ」 黙っていた臣だったが、スタスタと歩く李央にそう言い返した。 ギロリと振り向いた李央は臣に向き直り、更に目に力を入れる。 「どういう意味だよ」 「無視すればいいだろ」 「それ、臣が言えんの?」 「話をすり替えるな」 「あぁイライラする。って言うか、臣はついてくるな」 「連れてこいって言われてるんだ」 「だったら兄さんの居場所教えろ。一人で行く」 埒が明かない会話に苛立ちを抑えられない。 李央は再び歩き出すと、道端でタクシーが通るのを待った。 いつもなら簡単に捕まるタクシーが、こういう時に限って一台も通らない。 「貴央が、二人で来いって」 「チッ、兄さんの従順な飼い犬だな」 「黙れ」 「見損なった」 「お前に言われたくないな」 「犬」 「いい加減にしろ」 売り言葉に買い言葉。 二人のやり取りが段々と熱くなる。 耐えかねた臣が李央の肩を掴み、力任せに振り向かせると、黙らせるように唇を押しつけた。 臣にキスされたことがわかると、李央の表情がみるみるうちに険しくなり、臣の胸を突き飛ばし、キスを拒否した。 素直に離れた臣を今一度睨みつけ、ようやく現れたタクシーを捕まえた。

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