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episode4_3
貴央が泊まっているホテルに到着するまでの間、李央と臣はそれぞれ窓の外を見ていて一言も言葉を交わさなかった。
ホテルのロビーを抜け、李央が先にエレベーターへ乗り込む。壁に寄り掛かり腕を組んで臣が階数ボタンを押すのを冷めた目で見つめている。
フロアに着くと臣の後を黙ってついて行き、ある部屋の前で立ち止まると臣はインターフォンを押した。
「兄さんに会うってだけで憂鬱なのに、臣が
一緒とかありえない」
「用があるのはお前にだ。俺はすぐに帰る」
「どーだか」
ようやく口を開いたか思えば、また嫌味。
臣はあからさまな溜息をつき、呆れたように言い返した。
すぐに出てこない貴央を呼び出すためにもう一度インターフォンを鳴らそうと手を伸ばすと、目の前のドアノブが音を立てて下がった。
「李央!」
ドアの向こうから出てきた、満面の笑みの男が李央を見つけると勢いよく抱きついた。
「帰ってきてたんですね」
「ああ。電話に出ないから心配したよ」
密着させた体を離し、李央の顔をよく見た貴央は軽く口づける。
「俺は帰るからな」
「臣待って」
二人のやり取りを間近で見ていた臣は来た道を戻ろうと背を向けた。早くこの場から立ち去ろうと二人の顔も見ずに手を振ったが、貴央は臣を引き留めた。
「今日は臣にもいて欲しいんだ」
貴央は優しい笑顔で言った。
貴央をよく知らない人が見れば、穏やかで優しそうな人にしか見えない。
だが、李央と臣は違う。二人は一瞬目を合わせたがすぐに逸らし、臣は黙って部屋の中へ入っていった。
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