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episode1_7
李央と臣の付き合いは長く、李央が学生の頃からだ。付き合いが長いだけあり、お互いの事をよく知っているが、そのせいか折り合いはあまり良くない。
特定の相手を作らず、不特定多数の男と関係を持っている李央だが、その中でも臣は一番のお気に入りらしい。
「本当むかつく」
ストレートの黒髪を乱暴に掻き上げる李央は携帯を片手に繁華街に向かって歩き出した。
画面にずらりと並ぶ名前の中から一人選ぼうとするがピンとくるのがいない。
一度や二度寝ただけの男とどんなセックスをしたか、増してや顔など覚えている訳もない。李央が繰り返し寝るのは数名いるお気に入りの男だけだ。
呼び出すのを諦めた李央は適当に誰か引っかければいいかと、携帯をスラックスのポケットにしまった。
繁華街の光が眩しく感じられる所まで歩いてくる間に、数台の車が李央を追い越していく。その中で最後に近づいてくるエンジンの重低音が聞こえると、アスファルトに食い込むタイヤの音がゆっくりになり李央のすぐ横で停まった。
「凄い偶然だ」
李央は足を止め、誰だと言わんばかりに自動で下がっていく窓を睨みつける。
「李央」
窓から手が伸びてくると李央の手首を掴み、車のボディーに貼り付くように引き寄せた。
「洸希 さん」
不機嫌に曇っていた李央の表情が一気に明るくなった。
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