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episode2_8
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洸希の車が李央の自宅マンション前の道に停まった。
「次はいつ会える」
助手席から降りた李央は運転席側に回り、洸希の目線に合わせて腰を屈めている。
「連絡くれたらいつでも。洸希さんの誘いなら喜んで」
笑ってみせれば名残惜しそうに洸希は李央の手を掴んだ。
「さっきからずっと電話鳴ってるんだからそろそろ出てあげたら?」
「うるさい電話だな」
「洸希さんがサボったからね」
わざと嫌みを言えば、確かにそうだと洸希は諦めて李央の手を離しハンドルを握った。
「また連絡する」
「うん、待ってる」
李央は一歩下がって手を振ると洸希の車は走り出し、あっという間に雑踏に消えていった。
「さてと、俺はどうしようかな」
こんな真っ昼間から引っかかる奴はいなそうだ。洸希とのセックスで体は満たされている。部屋に戻り夕方頃まで寝て時間を潰すしかないかと、マンションのエントランスに入るすんでで、携帯が鳴った。
「ん?誰?」
ディスプレイには知らない携帯番号が表示されている。直ぐに切れると思った電話はなかなか切れず、李央は出てみることにした。
「はい」
「あっ、あの・・・サイト見て電話してるんですけど・・・あ、た、た、タチ専のリュウキさん希望で今からデートコースをお願いしたくて・・」
おどおどした様子で、一方的に話し出す相手の内容を眉間に皺を寄せて黙って聞いていると、間違い電話なのだと気がついた。
間違っていると教えてやればいいものを、李央は何か閃いたように楽しそうな表情になった。
「かしこまりました。待ち合わせはどちらがよろしいですか?」
店の人になりすまし、何度かやり取りをすると電話が切れた。
部屋に向いていた足はまた道際へ逆戻りしタクシーを捕まえていた。
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