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episode3_2

指定のスクリーンへ入る前に、飲み物と広夢が食べたいと言ったキャラメルポップコーンを購入した。 スクリーンに入り開けた視界を見回せば、もう十数人が着席しているようだ。李央と広夢も階段を上り、チケットの半券に書いてある席番を探す。 「あ、ここです」 広夢が立ち止まったそこは、一番後ろの席のペアシートだった。 「ここの列だけ違うんだね」 不思議そうにしながらも、李央は腰を下ろした。 前列より一段高くなったそこは、二人がけのソファーになっている。自然の体勢で映画を楽しめる最高のポジションだ。 「勝手にすみません・・デートだからってつい・・嬉しくて・・」 備え付けのテーブルに買った物を置いた広夢は、気まずそうにその場に立って俯いた。 「何で謝るの」 「わっ!?」 李央が広夢の腕引っ張り自分の元へ引き寄せると、突然の力に情けなく胸元に飛び込む形になった。 「この列、俺達だけみたいだし楽しめそうだね」 体勢を崩した広夢の耳元で囁けば、意味を理解したのか慌てたように顔を上げた。広夢の表情と態度に機嫌良く笑う李央は掴んでいた手を離し足を組むと、さっき買ったコーヒーに口をつけた。 ようやく広夢がシートに座ると、室内が薄暗くなりスクリーンには予告が流れ始めた。それを二人黙って見ていれば部屋は真っ暗になり、本編が始まった。 ずっと見たかった映画だったはずなのに、見逃す所なくじっくり観るんだと楽しみにしてきたはずなのに、耳に残った李央の声に意識を持って行かれてしまったのか、広夢は内容に集中できないでいた。 隣が気になって仕方ない・・・。 意味深なことを言ったくせに何も起きないのか・・・。 ただの思い上がりだったのか・・・。 そうだったら恥ずかしい・・・。 広夢はチラチラと何度も李央を盗み見ている。 「映画見なくていいの?」 「っ・・」 誘惑に勝てず、また横目で盗み見ようとすると、組んだ足に頬杖をついている李央と目が合った。 広夢は慌てて視線を逸らして誤魔化そうとしたが、力強く腰を抱かれ逃げることは出来なくなった。

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