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第50話 淋しさの行方①

「うん。」涼矢は背後から和樹の耳に軽くキスをした。 「ずるいよ。俺にはやめろって言ったくせに。」 「俺は節度というものを知ってるからね。ケダモノじゃないから。」 「やっぱり俺のことケダモノ扱いしてんじゃねえか。変態め。」悪態をつきながら、和樹は泣きそうになっていた。そんな風に荒っぽい言葉の応酬でもしていなければ、泣いてしまいそうだった。何に対する感情なのかわからない。涼矢が自分のことを、それほどまでに考えていてくれたのが嬉しい。その分、自分のことしか考えていなかった自分が情けない。淋しさ。不安。でも、涼矢となら、それを乗り越えていけそうな予感。 「ケダモノと変態ならお似合いかな。」涼矢も悪態をつきはじめた。いつもの涼矢に戻ったかのようで、今までとは違う涼矢。きっと俺も。何かが変わってる、と思う和樹だった。 「フッ。」思わず笑いがこみあげてきた。つられるように涼矢も笑った。 「さっきのコーヒーで、舌、火傷した。」和樹は後ろの涼矢を振り返り、そんなことを言いだした。実際、口の中がひりひりしていた。 「一気に飲むからだよ。」 「責任取って。」舌を出す。 「どうやって。」 「涼矢のベロで癒して。火傷の手当で、キスじゃないからいいでしょ?」 「ばーか。」そう言いつつ、涼矢は和樹の舌先に、自分の舌を合わせた。それから、和樹の頭をぐいと引き寄せ、改めてキスをした。唇を押し付けたまま、和樹は椅子から立ち上がり、涼矢を両腕で抱いた。涼矢も和樹の背中に腕を回し、更に、右足を和樹の股間に差し入れて、わざとこすりつけるように動かした。 「誰が節度を知ってるって? この足は何だ?」 「火傷の手当。」 「嘘つけよ。」 「だってここも熱いから。」足で和樹の股間を刺激する。 「……じゃ、そこも手当して。」和樹の呼吸の間隔が短くなってくる。 「腰痛いんだろ?」と言いながらも涼矢が和樹のズボンのファスナーを下げる。 「痛いけど。場合によってはがんばる。」  涼矢はフフッと笑い、「フェラでいい?」と囁いた。 「いや、でも……」 「要らない?」 「要る。」  涼矢はストンと腰を落として和樹の前にしゃがみ、すぐに和樹のペニスを口に含んだ。  和樹は食器棚にもたれるようにして、下半身を涼矢に預けた。「あ」という声とも言えないほどの小さな喘ぎが、和樹の口から洩れてくる。上から見下ろすと、気配を察したのか涼矢も視線を上げて、二人の目があった。こういう時の上目遣いがどんなに色っぽいか、こいつわかってんのかな、と和樹は思う。しかも口には俺のアレ。初めての時よりだいぶ上達した涼矢のフェラ。どうしよう、すげえ気持ちいい……。「涼、も、すぐ、イキそ。」和樹が言う。 「ん。いーお。らひて。」咥えたまましゃべるからそんなことになる。エロい。和樹は涼矢の口の中に迸らせた。涼矢はすんなりとそれを飲み込む。口元を手で軽く拭ったが、口の端には白い跡が残っていて、淫靡に見える。涼矢がその場を立ち去ろうとするので、和樹は引きとめる。「どこ行く。」 「そこだよ。口すすごうと思って。」すぐそばのキッチンのシンクを示す。 「いいよ、別に。」 「だって、キスしたいし。」 「いいってば。」和樹は涼矢を抱き寄せて、キスした。「変な味。」 「だから言ったのに。」

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