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第52話 淋しさの行方③

「俺、和樹がしたいことなら大抵のことはやれると思うよ。生命が危険にさらされなくて、違法行為でない限りは。」 「やるか。俺はごくふつうの! 愛のあるセックスしかしない!」涼矢の膝に顔を乗せたまま、和樹は言う。 「愛の有る無しはともかく、ゲイセックスはふつうとは言い難いと思う。ふつうと言える世の中になってほしいとは思うけど。」 「そういう話してんじゃねえよ。」  涼矢は和樹のこめかみを両手ではさむ。「なんかおもしろいな、この角度。生首がしゃべってるみたい。」 「そういうのいいから。」和樹は立ち上がり、涼矢を押し倒した。「やるぞ。」 「ふつうの、愛のあるセックスを。」 「そうだよ。」涼矢に口づける。「変態としては、ふつうじゃ物足りないか?」和樹の指が涼矢のシャツの中に入ってきて、乳首を弾く。 「和樹のしたいようにしていい。」涼矢の顔が上気してくる。「言う通りにするから。」 「こっちのセリフだよ。」和樹は涼矢のズボンを引きずり下ろした。「結局俺がいつも言いなりになってる。」既に涼矢のペニスは硬く勃起していた。和樹はパンツの上からそれを握った。「本当にガッチガチだな。もう先っぽ濡れてるぞ。パンツまで濡れてる。これで節度だのなんだの、良く言えたな。」  涼矢は潤んだ目で和樹を見たまま、無言だ。ただ荒く息を吐いている。 「何か言えよ。」和樹が先端を強めに握った。 「んっ……。」涼矢は顔を歪め、小さく呻いて横を向いた。 「そう言えば、最初の時、おまえ答えなかったけど。」言いながら、筒状にした手を上下させる。「一人でする時、俺のこと想像してた?」 「……。」涼矢は目をつむる。 「答えて。」 「……して、た……。」ハアハアと呼吸が早くなる。 「その時はさ、どっちだったの。挿れるほう? 挿れられるほう?」  涼矢はうなずく。 「どっちだよ。」 「……どっちも。」 「へえ……。」和樹は手を止めない。もう一方の手では乳首をいじった。涼矢が身をよじってそれから逃れようとするのを、肘で制する。「俺、ズリネタにされてたんだな。三年近くも。」 「あっ。」涼矢の身体がビクンとのけぞった。 「その俺に、リアルにこんなことされて、嬉しいんだ?」涼矢は薄目を開けて、和樹を見る。その目尻には少し涙がにじんでいる。「嬉しいよね? 答えて。」  涼矢はまたうなずいた。 「ちゃんと言葉で。」 「嬉しい……。」 「でもさぁ、俺、おまえに結構散々なことされてるよね。ま、気持ちいいから良いんだけど。」 「ごめ……ふぐっ」和樹はペニスを握っていた手の指を、涼矢の口の中につっこんだ。 「おまえの先走り。自分でちゃんときれいにして。」涼矢の舌が和樹の指を舐めた。「音、立てて舐めて。AVでフェラする奴みたいに。」涼矢は一瞬動きを止めたが、すぐにぴちゃぴちゃと音を立てて舐め始めた。和樹は「エロいな。」と呟く。 「さて、どうしようか。」和樹は前置きなくその指を抜き去る。対象を急に取り上げられてぽっかりと口を開けたままの涼矢が、和樹を見る。和樹は涼矢のパンツをずり下げた。さっきより更に怒張したペニスを直接握るが、今度はその手を動かさない。「これ、俺のしたいようにして良いんだよね?」  涼矢はうなずいた。 「だから、ちゃんと言葉で言ってってば。」と和樹が言うと、涼矢は「好きにしていい。」と小さな声で言った。 「じゃあ、挿れて。」意外なことを言われたかのように涼矢は和樹を見た。「何、その反応。俺、そっちのほうが好きって言っただろ。」

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