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第67話 スキ・キライ・キス②
うっわ。エロい。これはエロい。こんなバスの中で。誰も見ていないと思うけど、一応は公衆の面前で。涼矢がどんな表情なのかはうつむいているからわからない。でも、耳が真っ赤だから、顔だって真っ赤なんだろう。顔が見えない分、余計想像をかきたてられる。涼矢はいつの間にか両手で和樹の手を握り、口をすぼめて人差し指をくわえ、舌だけでなく口全体を使って舐めている。なんかこう、実際のフェラよりワイセツな感じ。これはヤバい。さすがにこの状況では音を立てないようにしているようで、むしろ呼吸音さえもこらえてる感じが伝わってくるから、こっちまで緊張して、ドキドキする。
目的の停留所まで、乗車時間は約40分間。その前に乗客がたくさん乗り込んでくるだろう停留所がある。そこまでだとしても30分ほどある。30分の間に、どちらが先に音を上げるのか。
下を向いて舐めているせいか、唾液が垂れてくるらしい。時折、舐めるのを一時停止して、片手で口元を拭う仕草をする。和樹はその隙をついて、中指も口の中につっこんだ。涼矢は一瞬ビクッと体を震わせたが、すぐに二本まとめて舐める。
そんなことをしているうちに、和樹は股間に異変を感じ、足を組んだ。ついでというわけでもないが、舐められていた左手を抜いて、代わりに右手の二本指を口の中に挿入した。涼矢が不思議そうに顔を上げた。「続けて。」と言うと、再びうつむいて、さっきと同様に右手の指を舐めはじめた。
和樹は空いた左手で、左側にいる涼矢の股間に手を伸ばす。涼矢も自分と同じぐらい、勃っているようだ。「それはっ……。」涼矢が反射的に指を吐き出し、顔を上げて首を横に振った。それ以上少しでも無理強いすれば泣き出しそうなほど必死の表情だ。和樹は股間に置いた手を外した。涼矢はほっとしたように小さく息を吐いた。
涼矢め。口の周りをよだれでベトベトにさせたエロい顔して、何ほっとしてんだよっ。可愛すぎるだろっ。あぁもう、今すぐ押し倒してえっ。でも、ダメだ、ここを乗り越えても、次のバスに乗り継がなくちゃいけないし、その後にはうちに来るんじゃ、続きもできない。
その時、バスが止まり、ドヤドヤと新たな乗客が入ってきた。普段はそれほど利用客のいない停留所だが、たまたまグループ客がいたらしい。賑やかに入ってくると、彼らは横並びに座りたいようで、和樹たちのすぐ後ろ、つまり最後尾の長椅子のシートを目指して、バス後部に向かってきた。
涼矢は和樹から素早く離れ、さりげなさを装いながら口元を拭い、和樹とは反対側を向いた。持っていたバッグを抱え込むように持ち直す。きっとそれは、和樹が足を組んだのと同じ理由だ。助かったのか、残念なのか。和樹も複雑な気持ちだった。
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