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第78話 between the sheets ④
涼矢は和樹をぎゅっと抱きしめる。「いいよ。俺、和樹の言うことは、何でも聞くから。」
「嘘つけ……。」息を荒げながら和樹はせめてもの反論をする。
「だって俺、ちゃんとやってるでしょ? バスの中でも、言うとおりにしたよ。」
「……。」和樹は今度こそ何も言い返せない。
涼矢は片手を伸ばして、近くに準備しておいたローションやコンドームを取る。和樹が部屋から持ってきたバッグに入っていたものだ。ローションを手に取り、和樹のそこに塗りこめる。和樹は恥ずかしそうにうつむいて、されるがままだ。
「恥ずかしい?」と涼矢が囁く。うなずく和樹の腰を支え「じゃあ、あっち向こうか。そのほうが挿れやすいし。」と言うと、和樹はそれに素直に応じ、対面座位から背面の座位になった。「挿れるよ。」の声に、和樹は軽く腰を浮かせる。涼矢はペニスの先端を和樹の入口にあてた。それから和樹の耳にキスしながら言う。「自分で、腰使って、挿れてみてよ。支えててあげるから。」和樹はびっくりして振り向いて背後の涼矢を見たが、無言のまま、また前を向いた。そして、ゆっくりと腰を落としていく。「自分の良いところ、探して。」と涼矢。そんな言葉に、また煽られる。
「…あっ……ああっ。」思わず喘ぎがこぼれてしまう。
「声、聞こえちゃうから、我慢して。」涼矢は和樹の口を手で覆う。「お父さんも帰ってきたばかりで、まだ起きてるんじゃない?」
そう、シーツ代わりにタオルケットを敷く敷かないとやっていた時に、和樹の父親が帰宅したのだ。涼矢は一応顔を出して、挨拶だけを済ませた。息子の来客には慣れているらしく、挨拶以上の特別のやりとりはなかった。その直後にはキッチンや洗面所から物音がしていたが、今はしんと静まり返っているから、おそらくもう寝室にひっこんでいるとは思うが、涼矢にそんな風に言われると気になってしまう和樹だった。
しかし、そうは言っても疼く下半身に、切ない声が漏れ出てしまうし、それでも自分から腰を振るのも止められない。涼矢は片手で和樹の口を覆い、片手で腰を支えていたが、腰を支えていたほうの手を、和樹のペニスに持って行く。
「やだ、だめぇっ。」後ろも前も刺激されると、和樹は少し大きな声が出てしまった。
「声、押さえて。」
「んっ……。」
涼矢は口を押さえていた手のひらをずらして、手のひらの代わりに腕の部分が和樹の口元に来るようにした。「我慢できなかったら、噛んでいいから。」
「そんなの、できない……。」
「大丈夫だから。」涼矢が言う。むしろ噛んでほしいのではないかとすら思えるほど力強く。和樹はより大きな快感を得たいという欲求と、声を出さないように昂りを抑えこまなければという忍耐との間で揺れ動きつつ、涼矢の愛撫を受けていた。
「ぅあっ……はあ…あっ……。」控えめな、でも、止めることのできない喘ぎ声が室内にしのびやかに響く。その時、涼矢がふいに、下からつきあげた。和樹は「あんっ。」と大きな声を出してしまい、ついに、とっさに目の前の腕を噛んだ。「あ……ごめ……。」
「大丈夫。」涼矢は優しい声で言う。「今、ひとつ思い出した。」
「え……?」こんな時に何を言い出す気だ、と和樹はぼんやりとした頭で思う。
「あの鍵、さっき閉め忘れたかも。」和樹と、その背後の涼矢の、ちょうど正面には、部屋のドアがあった。室内はオレンジ色の常夜灯がひとつ点いているだけで仄暗い。カンヌキ型の錠がかかってるかどうか、二人の位置から見分けることはできない。
「嘘だろ。」
「だからね、あんまり大きな声出さないほうがいいと思うよ。」
「嘘、ちょっと、ちゃんとたしかめ……ぃやっ!!」涼矢がズンと大きくつきあげた。前も同時にしごきながらだ。「やだ、だめだって……あっ…。」和樹はたまらずまた涼矢の腕を噛んだ。
「あのドア開けたら、こんな和樹が見られちゃうね。」
「やっ……お願い、涼、もう……ゆるし…」和樹の目尻から涙が一筋流れてきた。羞恥と、少しの怒りと、そして、今までの中でもっとも大きな昂奮。
「和樹の一番可愛い顔、見せて。」涼矢は噛まれた腕で、和樹を振り向かせる。「あれ、泣かせちゃった? ごめんね、ちゃんと閉めたの思い出したよ。心配しないで。」そう言って、涼矢は和樹の涙をなめとった。
そう言われ、和樹は安堵すると共に、緊張の掛金が外れ、懸命に我慢していたすべての感情が溢れ出てしまい、ついには射精に至った。和樹のほうはコンドームをつけていないので、放たれた精液は涼矢の手と、タオルケットを汚した。涼矢はそのタオルケットの上に和樹を四つん這いにさせ、いきり立ったペニスを押し込むと、間もなく和樹の中に射精した。
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