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第93話 ジェラシー⑤

「……痛い……。」和樹の腕の中から、そんな声が聞こえてきた。 「痛いことしてねえだろ、今は!」 「泡が目に入った。」慌てて和樹は一歩引いた。目をしょぼしょぼさせている涼矢。和樹はカランから真水を出した。涼矢はそれで目を洗う。 「悪ぃ。」 「もう大丈夫。で、おまえの主張も理解した。」涼矢の目はやや充血しているが大したことはなさそうだ。 「お、おう。」 「好きなようにする。でも、どうしても無理な時はちゃんと言う。」 「うん、そう。」 「これはお互いにってことで。おまえも好きなようにしていい。俺も無理なことはちゃんと言う。たぶんないけど。」 「ないのかよ。」 「だって和樹は、優しいから。」涼矢は和樹の首に手を回す。「愛のある、ふつうの、優しいセックス、だろ?」 「なんだか馬鹿にされてる気がする。」 「してないよ。」涼矢は、和樹に口づける。「じゃ、好きなように、させてもらおうかな?」涼矢が艶然と笑った。  すっげ、怖いんだけど、何する気だよ。和樹は思うが、言葉が出ない。  涼矢の指先が、和樹の乳首をつまんだ。ひねるようにしたかと思うと、優しく撫でる。そんなことを繰り返されて、和樹の小さな乳首がぷっくりと膨れる。それを今度は舌で舐められると「んっ。」と声が出てしまった。涼矢が上目遣いで和樹を見る。舐めていないほうの乳首を手のひら全体でこねては、止まる。 「和樹の心臓、すげえドキドキしてるよ。」 「……たりまえだろ。」 「気持ちいい?」 「……ん。」  乳首を舐めながら、涼矢は和樹の下腹部に手を伸ばした。ペニスにはちょっと触れただけで、直接後ろの穴のほうへと。涼矢の指がほんの入口に差し掛かっただけで、和樹の身体がピクリと反応する。乳首にあった手が、腰に回り、和樹に膝立ちするように促した。涼矢が指を挿入しやすくするために。 「んっ……あっ……。」涼矢の指がゆっくりと侵入してくる。さっきの荒々しい作業とは違う。和樹の反応を確かめながら進む。和樹は涼矢の首に手を回し、キスをせがむように口を半開きにした。涼矢はそれに応えるように、舌を出して、和樹の舌とからませた。わざと音を立てるようなキスを何度も繰り返す。昂まっていく中で、和樹は自分のペニスに触れようとする。 「何してんの。」その手を涼矢が制止した。「後ろだけで、イケるくせに。」涼矢の指が、和樹の敏感なところを刺激した。 「……あんっ。」思わず喘ぎがこぼれた瞬間に、和樹は歯を食いしばった。 「せっかくホテルなんだから、我慢しなくていいだろ。」涼矢はそう言って舌先で和樹の両唇を割る。「聞かせて、声。」 「やっ。あっ……んっ。」今更気がついたこと。このバスルームは、この淫らな声をやけに響かせるだけじゃない。照明も無駄に明るく、醜態を隅々までさらけ出す。そんなところで涼矢にじりじりといたぶられるぐらいなら、いっそ早くイッてしまいたい。和樹が再び、前を触ろうとした。 「だめだってば。」だが、涼矢にすぐ気付かれてしまった。「そんなに触りたいなら、俺のも。」涼矢は自分のペニスと和樹のそれをまとめて握らせた。和樹は、裏筋同士を刺激し合うようにこすり合わせた。 「あっ。」次に甘い声を挙げたのは涼矢のほうだった。その反応を見ながら、和樹は両手を使って、より強くこすり合わせたり、涼矢のそれをこすりあげたりした。二人のペニスが和樹の手の中で硬さを増していく。「んっ……あ、いぃ…。」和樹のアナルをほぐしていた指の動きが、止まる。「涼矢、気持ちいい?」涼矢は熱を帯びた目で和樹を見つめ、うなずいた。和樹は手を止めずに、涼矢にキスをする。 「あっ……かずっ……も、それ以上やったら……出ちゃう…から。」連続するキスの合間に、涼矢が途切れ途切れに言う。 「一回、出せば?」 「やだ。」 「じゃあ、どうしたいんだよ。好きにするんだろ?」和樹に若干の余裕が出てきたようだ。そんな和樹を涼矢は睨むが、今の和樹には色っぽい挑発にしか見えない。反撃するように、涼矢は再び和樹の穴の指を動かした。和樹はなんとか声を出さずに持ちこたえることに成功する。 「ああ、好きにするよ。とりあえずおまえ、立て。」少し冷静さを取り戻したらしい涼矢が、命令する。 「え。」 「壁に手ぇついて、立て。」  和樹は浴槽の中で立ち上がり、壁のほうを向いて、手をついた。涼矢は、即座にその穴に硬く尖らせた舌先を挿れる。 「うぁっ。」和樹の身体は激しく反応した。「それ……、ずるい。」 「ずるいも何もあるかよ。好きだろ?」それだけ言って、またすぐに舐めるのを再開した。  和樹は、絶え間なく続く刺激で朦朧としながら、バスルームの壁の白さを恥ずかしく思う。夜中に涼矢と抱き合った、あの常夜灯ひとつの薄暗い部屋とは打って変わって明るいバスルーム。 「やだ、涼、それ、すぐ、イッちゃうっ……。」  涼矢は和樹のそこを左右に開いて、より一層露出させた。 「ちょ、涼矢、やめろって、そんなっ。」涼矢はまだ座ったままだ。涼矢の視界を想像すると和樹の羞恥はピークになった。 「可愛いよ。和樹のここ、ひくひくして。」 「やめ……て。」和樹の口調は懇願に近くなっていく。 「やめていいの? すごく欲しがってるみたいだけど。」涼矢はいったん舐めるのをやめ、代わりに指を回し挿れた。「それとも、こっちがいい?」 「ひぁっ!」和樹の全身が痙攣するように震えた。

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