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第94話 ジェラシー⑥

「でも、一番好きなのはこれだよね。」涼矢の指は和樹の前立腺を正確にとらえて、刺激した。 「あっ、ああ、やっ、もう、そこ、だめだからっ。」 「だめじゃないだろ?」 「やだって、もう、涼っ!」後ろを涼矢に指で弄ばれ、和樹のペニスは今にも溢れそうだ。 「このままイク?」 「……や…やだぁ。」 「どっちのやだ? ちゃんと言えたら、その通りにするから。」 「……挿れて…ほし……。」この前も言わされた恥ずかしいセリフを口走らざるを得なかった。「指を?」涼矢は和樹の中の指をくいっと曲げる。 「ち、ちがっ」 「指じゃないの?」 「涼矢の」肩で息するように、呼吸を荒げる和樹。 「俺の、何?」涼矢も立ち上がり、和樹の背中にぴったりとくっついた。尻の合間にはペニスを軽く当てている。 「それ、早く……挿れてっ。」 「それ、かぁ。……まあ、いいや。」涼矢は和樹のそこにペニスを挿入した。 「あんっ」和樹の身体が一瞬にして熱くなる。「……あっ、やっ……涼矢ぁ。」  涼矢は浅いところを何度もこするように抜き差しした。「気持ちいい?」 「うんっ…気持ち……いいっ。」その言葉を裏付けるように、和樹のペニスは既に上を向いて屹立していた。 「俺も。……あ、ゴムしてないや。」涼矢がするりとペニスを抜いた。 「やっ、抜かないでっ。」 「でも、いいの?」和樹の答えなど予想していたかのように、涼矢はニヤリとしたが、背中を向けている和樹には見えない。 「いいからっ、そのまま、中に出して。」 「我慢できないの?」涼矢はわざと熱い息がかかるように、和樹の耳元で言う。 「できない……早く、挿れてぇ」 「しょうがないなあ。」涼矢は再び和樹に挿入する。今度は、いきなり、一気に奥まで。そして一気にギリギリのところまで引き戻す。 「ああっ。」和樹が激しく身悶える。 「和樹、エロくて可愛い。大好き。」涼矢は何度も和樹の名を呼んでは、そのたびに奥まで突いた。和樹もまた、そのたびに激しく喘ぎ、上り詰めて行く。 「俺、もう、イキそ……涼矢、奥に出して。」 「うん。」涼矢は和樹の腰を抱き、ひときわ強く貫いた。「んんっ」  涼矢の放出した熱を体の奥に感じると、和樹も迸らせた。  涼矢がペニスを抜くと、和樹は涼矢のほうを向き直った。二人は抱き合い、立ったままディープキスをした。 「涼矢だけだから。」キスの合間に和樹が言う。 「和樹にこんなことしていいのは?」と涼矢は和樹の反応を楽しむように言った。 「そう。」 「他の奴には見せんなよ。和樹の、そういう顔。エロ過ぎだから。」 「見せるかよ。」 「俺には、見せて。」涼矢の唇が、頬や耳も舐めて行く。「おまえの、もっとエロいとこ。顔だけじゃなくて。」 「もう、これ以上見せるとこなんかねえだろ。」 「あるよ、きっと。」涼矢は和樹の尻に指を伸ばした。その指先についた白い液、を和樹の眼前でペロリと舐めてみせた。「俺も、おまえもまだ知らないだけで。」涼矢がまた何か企んでいるかのように笑った。  白濁液を舐め取る涼矢の赤い舌。和樹は背筋がゾクリとした。俺も涼矢もまだ知らない、俺。それは知りたくもあり、知りたくないものでもあった。  二人はバスルームからベッドに移動した。和樹が寝転ぶと、ぴったりと身を寄せて涼矢も横たわった。 「なあ。」と涼矢が言う。 「ん?」 「すごくくだらないこと、聞いていい?」 「何だよ?」 「ここ、川島さんと来た?」 「はあ?」和樹は反射的に上半身を起こして、涼矢を見た。 「こういうの聞く奴って、本当、めんどうくさくて鬱陶しいだろうけど。」  和樹は全くその通りだと思う。一言文句を言いたくもなったが、もっと嫉妬しろと言ったのは自分で、それもついさっきのことで、さすがにまだ忘れてはいない。  それから、実際にこのホテルに誰と来たのかを思い出そうとした。綾乃とは……来ていない気がする。高校の地元過ぎて、誰かに見られそうだからここは避けたのだ。だが、「避けた」ということは、綾乃とつきあう以前からこのホテルの存在は知っていたはずだ。では、ミサキか? でも、ミサキの時は、彼女の一人暮らしの部屋に入り浸っていた。わざわざホテルに行く必要はなかったはずだ。そうするとマユか? その可能性は高い。しかし、彼女の処女をいただいたのは、遠出のデートで盛り上がった出先のホテルであり、このホテルではない。では、マユとの二回目以降のどれかでここに?  考え込む和樹に、涼矢は少し焦った。「無理やり聞きだす気はないから、言いたくないなら、別に。」 「いや、そうじゃないんだ。」和樹は手を顎にやって、思い出そうと試みる。「俺、最低かも。」 「え、何?」 「誰かとここに来たのは確実なんだけど、誰と来たか思い出せないんだ。」

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