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第103話 ピアス②
階段を上り、涼矢の部屋に入ると、また早速涼矢は和樹の首に腕を回して、キスをせがんできた。
和樹は求められるままに、ひとしきりキスを繰り返した後、「涼矢、キャラ崩壊してるぞ。やたら甘えて。」と言った。
「昨日一日、親父の相手で疲れたんだよ。疲れには甘いものが必要だろ?」
「俺はブドウ糖か。」
「そう。もう、限界。倒れそう。」涼矢は和樹にしがみついた。
「まだ10時前だよ。」
「何時になったらいいの?」涼矢は和樹をまっすぐに見る。切なそうな目で。
「……おまえって本当に、簡単にタガを外してくれるよな。」和樹は涼矢をベッドに誘い、涼矢の服のボタンを外していった。「補充ってさ、俺がいなくなったらどうするの。」
和樹にされるがままの涼矢は「いなくならないだろ。会うのがちょっと大変になるだけ。」と言った。口角こそ上げているけれど、笑顔にはなっていない。
和樹は安易な言葉を使ったことを後悔した。いなくなるということ。その本当の意味を涼矢は知っている。「何か……。」
「え?」
「何か、あげたいと思ってて。」
「俺、誕生日は夏だよ?」
「違うって。何か、離れてても、一緒にいる気分になれるやつ。俺はあの絵をもらったけど、俺、おまえに何も。」
「ああ、そういうの。」
「何か欲しいものある?」
「それ、俺を剥きながら言うことか?」涼矢はほぼ全裸に近い格好にされていた。
「ははっ。」和樹は涼矢にキスして誤魔化す。
「それはつまり、愛とか信用とか、そういうものじゃなくて。」
「そういうものじゃなくて。形のあるもの。女の子だったら、アクセサリーかもしれないけど、おまえ、そういうの、しないもんな。」
「別にいいんじゃない、アクセサリー。今までは部活で禁止されてたからつける習慣がなかっただけ。」
「だったら定番で指輪かな? お揃いの。」
「あー…それは重い。」
「重い?」
「アクセサリーいっぱいつけてるのが標準の奴ならともかく、俺らが指輪つけてたら、聞かれるだろ、彼女いるの?みたいなこと。そういうの面倒くさい。」
こんな会話の合間にも、和樹は自分も服を脱いだり、お互いにそっと首や肩にキスをしたり、肌に触れたりしていた。
「面倒くさいって。」和樹は笑う。「甘々バージョンでも、そういうとこは素っ気ないんだな。」
「そんなことで、余計な詮索されたり、茶々を入れられたりするのは煩わしい。」
「なるほどね。」
涼矢は和樹の耳にキスした。「あ。」
「ん?」
「ピアスは?」
「ピアス? 涼矢からそんな発想が出てくるとは。」
「意外?」
「意外。」
「ほら、あのギタリストがしてたようなの。あれ、格好いいなって思ってた。」涼矢は、以前和樹から借りたCDのバンドのメンバーを挙げた。「あの時は坊主にジャージだったからさ、自分でつけようとは思わなかったけど。」
「ああ、確かに格好いいよなあ。わかった、それにしよ。」
「同じの、和樹もつけてくれんの?」
「うん。痛そうだけどな、ピアスって。」
「ピアスごときで何言ってんだよ。」涼矢が和樹の股間を強く握った。
「いってっ!!」
和樹の悲鳴をスルーして、涼矢が囁く。「ここにつける専用のピアスもあるみたいだけど? 亀頭のところにこう、通して。」和樹の亀頭に触れる。
「うわ、絶対無理。想像するだけで無理。」
「俺がしようか? 良いらしいよ、中に入れた時に、当たって。」
「だめ。」和樹が真剣な顔で言った。「このままでいいからね。親からもらった体にそんなことしちゃ絶対だめだからね。」
涼矢は吹き出した。「耳だって親からもらった体だよ?」
「耳はいいだろ、耳とチンコじゃ、違うだろ。」
涼矢は本格的に笑い出した。「冗談だよ。」
「おまえの冗談は冗談に聞こえねえんだよ。ああ、もう、おまえが変なこと言うから萎えた。」
「それは困ったな。」涼矢はまだ笑っている。「おまえから性欲を取ったら何も残らないのに。」
「何言ってんの、おまえが朝からサカって呼びだしたんだろうが。」
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