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第104話 ピアス③

「そうだね。何か問題ある?」涼矢は和樹の両腕を押さえ込んで、覆いかぶさるようにキスをした。 「……ないけど。」  涼矢が枕元のデジタル時計を視線で示す。「10時を過ぎたから、始めていいかな?」 「何、時間なんか気にしてたの。」 「和樹は10時オープンみたいだからさ。」  和樹が笑う。「俺はデパートか。」 「ブドウ糖だったりデパートだったり、忙しいね。」涼矢が和樹をぎゅっと抱いた。「あと、俺の抱き枕。ライナスの毛布。」 「ライナスの毛布?」 「知らない? スヌーピーに出てくる。ライナスって男の子が、いつも毛布を持ってるんだよ。ちっちゃい子がさ、お気に入りのタオルや人形をずっと握りしめて精神安定剤にするだろ、あれ。」 「俺は逆だなあ。」 「逆?」 「おまえといるとドキドキするもん。むしろ精神不安定になるよ。」  涼矢は目を見開いて赤面した。 「何だよ、その顔。」 「え、どんな顔してる?」 「真っ赤。で、びっくりしてるみたいな。」 「なんか。」涼矢は照れ隠しなのか、口元を手で隠すようにしている。「なんだろう。」 「照れてるの? 今更?」 「い、今更はそっちだろ。ドキドキするとか。」 「そりゃドキドキするよ。」和樹は涼矢の頭を抱き寄せると、口元の涼矢の手をよけて、その唇にキスをした。「好きだし。エロいし。」もう一度。それから涼矢の手を自分の胸に当てた。「今もしてるだろ?」 「自分の鼓動のほうが大きくて、わかんない。」 「おまえもドキドキしてるってことだ。」和樹は涼矢の胸に口づけ、その流れで乳首を口に含む。涼矢がかすかに体を反らせた。和樹は涼矢を下に組み伏せた。和樹の舌が涼矢の体を這っていくと、甘いため息のような喘ぎが涼矢の口からこぼれ始めた。  触れるたびに、涼矢の肌が熱を帯びてくる気がする。この体温を忘れたくない、と思う。 「涼、好きだよ。」和樹は改めて涼矢と唇を重ねた。 「うん。」涼矢が和樹の背中に腕を回す。「俺も。」 「近くにいなくても、ちゃんと俺はいるから。いつでも、おまえのライナスの毛布だから。」 「うん……。」和樹は涼矢への口づけと愛撫を繰り返した。涼矢は時折身をよじって悶えた。  途切れ途切れに喘ぎ声を上げる涼矢の腰に手を回し、和樹が言った。「なあ、俺が挿れてもいい?」 「え。うん、いいよ。…ちょっと、待ってて。」涼矢は体を起こそうとした。 「どうした。」 「ローション、俺も買った。そこに入ってるから。ゴムも。」ベッドのヘッドボードには収納がついている。その引き出しのことだ。 「用意がいいことで。」和樹が手を伸ばし、そこからその二つを出した。 「だって、カバンまで取りに行ってる間、和樹と離れるのが嫌だ。」  今度は和樹のほうが照れてしまう。「なーに可愛いこと言っちゃってんの。」  涼矢が強い力で和樹を抱きしめた。「すぐ思い出せるようにしておかないと。こういう、和樹の体温とか。」自分がつい今しがた思っていたことと同じことを涼矢が言う。 「手……貸して。」和樹は涼矢の手を自分のペニスのところに持って行く。「俺の、触って。」涼矢が言われるままに和樹のペニスをしごきだすと、それはすぐに硬くなっていった。 「気持ちいい?」 「ああ。」和樹は手を伸ばして、さっき出したローションを取ると、涼矢の手とアナルにそれを注いだ。「俺はもういいや。ほぐして。自分で。」 「ん……。」涼矢は嫌がるでもなく、自分のアナルに指を伸ばし、挿入した。「んっ……はっ……あ……。」  抜き差しされるその指と、それが立てる水音に、和樹の股間は勝手に硬さを増していった。 「恥ずかしくないの? 俺に見られてて。」  涼矢はつぶっていた目を薄く開いて、流し目のように和樹を見た。「は……恥ずかしいに決まっ……。」その言葉を最後まで聞く前に、和樹は自分の中指を涼矢の指に添えるようにして、同じところに挿れた。「ぃやっ……。」涼矢が全身で激しく反応した。 「涼矢の中、熱いね。」更に指を奥へと進めた。涼矢がその代わりに自分の指を抜こうとするが、それを制止する。「だめ、そのまま。」 「やだ、和樹ぃ、やっ…あっ……やだぁ。」和樹はいやがる涼矢の両脚を大きく開かせた。「やだって、もう見んなよ……。」 「おまえだって俺に目の前でやらせただろ。」  涼矢はキュッと唇を結び、涙目で和樹を見た。その表情がより一層和樹の加虐心を煽る。 「何でもするって言ってたし。」和樹はそう言い放つと自分の指を抜き、今度は涼矢のペニスを握った。「そっちは続けて。」 「も……挿れて、大丈夫だから。」苦しげに涼矢が言った。 「そう言えばやめられると思ってんの。だめだよ。」和樹は涼矢の股間に顔を埋め、ペニスを舐め上げた。その顔のすぐ近くでは涼矢の指が蠢いている。  前も後ろも絶え間なく刺激され、涼矢の喘ぎがますます激しくなっていった。 「やだ、もう、お願い、来て、和樹。」涼矢は指を抜いて、和樹の腕をつかんだ。  和樹はようやくコンドームを装着する。涼矢の足を持ちあげてその中心に入って行った。 「あっ…ああっ……んっ」涼矢の腰が浮き気味になって、和樹をより深く受け容れようとしていた。「あ、いいっ……和樹ぃっ。」 「涼、ちゃんと覚えてて。俺の。」  涼矢は喘ぎながらもコクコクとうなずいた。

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