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第111話 カウントダウン④
「俺が嫌がってるんだから、外せよ。」
「触ってもないうちから半勃ちのくせして、何言ってんの?」涼矢はそこでようやく和樹のペニスに触れた。軽く握るようにする。
和樹は何も言えなくなり、悔しそうに、ただ顔をそむけた。
「ごめんね、ひどいこと言ってるね、俺。」涼矢は言葉の上では謝りながらも、和樹のペニスに触れたまま、また乳首を舐める。
「やっ……やだ、やめ……。あっ。」和樹が激しく身をよじった。
「ちゃんと気持ち良くするから、許して。」涼矢は和樹のペニスをしごきはじめた。
「あっ、ああっ、やっ……やだ、んんっ。あっ……。」
和樹が悶えるたびに、タスキに引っ張られて、フレームがギシギシと軋んだ。「手首、痛くない?」そんな言葉だけ、やけに優しい。
「外して、お願い。」和樹が涙目で懇願してきた。
「それはできないよ。」
「涼、お願い。」
「おまえが悪いんだよ、和樹。そんなに可愛い顔するから。」涼矢はローションを使い、和樹のアナルに指を挿入して行く。
「あっ、あ、あ。」和樹は痙攣するように体をのけぞらす。
「気持ちいい?」
和樹は切羽詰まった様子でうなずいた。「いい、気持ちいいっ。」
涼矢は満足気に笑うと、指を挿れたまま、半勃ちから完全に屹立したペニスを舐め出した。
「あっ、やっ、涼、だめ、それ、すぐイッちゃ……。」
涼矢は和樹の先端をきゅっと握った。「まだだめ。もう少し我慢して。」涼矢は指だけの刺激に戻し、舐めるのは中断した。それでも、一度昂まるだけ昂まった和樹は、鎮まる気配もなく、全身をひくひくと快感に震わせていた。いつものように、声を抑えるために手で口元を覆うことすらできず、淫らな喘ぎは、そのまま部屋に響いた。
「涼っ、イキたい、イカせてっ。」指を出し入れするくちゅくちゅという音をかき消すように、和樹が卑猥な言葉を吐きだす。「挿れてっ。」
「そういう時はなんて言うんだっけ?」
「挿れて、涼矢の……おちんちん、挿れてくださいっ。」即答と言っていいほどの速さで、和樹が言った。
「うわ。」涼矢は一瞬すべての動きを止めた。「そんな風にされると、俺も限界。」涼矢は和樹の両脚を開かせ、その中心を目がけて自身のペニスを挿入した。
「あっ、あっ、あっ。」和樹は涼矢のリズムに合わせて、小刻みに喘いだ。「いい、涼、どうしよ、気持ちいいっ」
「うん、なんか、すげ……。」すぐに絶頂にいってしまわないように、涼矢は速度をゆるめたり、時にじっと停止したりさえした。それでも、和樹の喘ぎは止まらず、体をうねらせる。涼矢もじんわりと汗ばみ、呼吸が荒くなっていく。ギリギリまでお互いの快感を貪った果てに、ついに二人ともフィニッシュを迎えた。涼矢はコンドームの中にだが、何もつけていなかった和樹は、自分の腹の上に精液を放出することになった。涼矢がそれをティッシュで拭きとり、更にペニスに付着している分は舐め取った。その間、両手の自由が効かない和樹は、為す術もなく、ただされるがままだ。
涼矢は、息もまだ落ち着いていない和樹のタスキをほどいた。結んだところに何か跡がないか、手首を確認する。少し赤くなっているところはあるものの、特に目立つ傷のようなものはないのを見て、ほっとしたように息を吐いた。和樹はぐったりとしている。肉体的な疲労というよりも、おそらくは精神的なショックによることはお互いにわかっていた。
「許して。」涼矢は和樹の頬に口づける。
和樹はぼんやりと涼矢を見る。そして、さっきまでとは一転して心細そうな表情を浮かべている涼矢の頭を抱き寄せ、額にキスをした。「そんな顔するなよ。」
「どんな顔してる?」
「すげえ不安そう。」和樹は両腕で涼矢を抱きしめた。「気持ち良かったよ。不安になる必要なんかない。」
「本当に?」
「そうは見えなかったか?」
「……。」
「それが答えだよ。」
「じゃあ、またやってもいい?」
和樹は一瞬言葉に詰まるが、「お、おう、もちろん。」と強がった。
「ふふっ。」和樹の腕の中で涼矢が笑う。つられるように、和樹も笑う。
涼矢は和樹の腕の中から抜け出して、和樹の隣に身を置いた。
「和樹の東京の部屋、壁は厚いんだろうな?」
「あ、そこはチェックしてなかった。」
「一番大事なことだろ。」
「一番かよ。」
「そうだよ。健康な青少年が一人暮らしをするなら、最重要事項だ。」
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