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第125話 Orange sky , Blue sea ⑤

「大丈夫か?」 「昨日、あんまり寝てなくて。」 「俺のことで……?」和樹は涼矢の頬を愛しそうに撫でた。 「そうだけど、和樹のせいじゃない。いろいろ考えてて。」涼矢はその和樹の手首をつかむと、「あとは現実逃避、だな。」と呟いた。 「逃げるなら俺も一緒に連れていけよ。」 「一緒に行けないから現実逃避するんだろ。」 「でも、今はここにいる。」 「……そうだよな。」涼矢は、つかんでいた手首をひっぱるようにして和樹を自分に引き寄せたかと思うと、強く抱き締めた。 「力、強えよ。骨折れそう。」 「うん。でも、ごめん、加減できない。」 「しょうがないな。」和樹も涼矢を強く抱き返した。「少し、寝たら?」 「やだよ、時間もったいない。」 「あんな風に飛んじゃうぐらいなら、ちょっとでも寝てくれたほうが安心なんだけど。一時間だけでも。」 「それなら、15分だけ。」 「30分。」 「いや、15分。15分経ったら起こして。」涼矢はバタリと体を横たわらせた。和樹がそれに布団をかけてやる。「隣にいて。」 「ああ。いるよ。」  和樹は涼矢のすぐ隣に寝た。もっとも、普通サイズのシングルベッドで、男二人が並んだらぴったりくっつくようにしか寝られない。涼矢は枕に頭を乗せた瞬間に、スイッチがオフになったように、ことんと眠りに就いた。和樹も自室はシングルベッドだが、一人で寝るにも少し狭い。それで、東京のアパートには、部屋が狭くなることを犠牲にしてセミダブルのベッドを入れた。それ以外の余計な企みなどなくそうしたが、そうして良かった、と涼矢の寝顔を見て思った。きれいな鼻筋の横顔。すう、とかすかに寝息が聞こえる。  そんなになるまで思ってもらえる価値が、俺のどこにあるんだよ、涼矢。  夜も眠れないほど、  ことの最中に意識を飛ばしてしまうほど、  俺はおまえに辛いを思いをさせているのか? きっとそうなんだろうな。  でも、だからって俺はもう、退かない。自分のせいだと思うのもやめる。  俺のことを好きになるのは、苦しかったけれど、幸せだったとおまえが言ってくれたから。  俺もおまえが好きだよ。好きだ。心から。  物理的には離れるとしても、俺はずっとそばにいる。一番近くにいる。  和樹が涼矢を起こしたのは、結局30分後だった。涼矢はすんなりと起きて、すっきりした表情になっていたが、30分寝かされていたことを知ると、不服そうに口をとがらせた。 「15分損した。」 「損したってことはないだろ。」 「貴重な15分だったのに。」 「そんなに貴重なら、こんな話してないで、さっさとやろうぜ。」 「相変わらず情緒がないな。」 「ごめん。」和樹はニヤリと笑うと涼矢の耳元で囁いた。「涼、早く抱いてよ。」 「もう。」涼矢は和樹の口を塞ぐようにキスをした。 「起き抜けでいきなりは無理?」 「何言ってんの、舐めてもらっちゃ困る。」  和樹は涼矢の頬を舐めた。「舐めちゃ困るのか? 人のことはいつでもどこでも舐めるくせして。」 「あんまりそういう生意気なことを言ってると、また縛り上げるよ?」 「いいけど、それは後回しで。」和樹は涼矢の背に手を回す。「今は、なるべく、くっついてやりたい。」くっついて、涼矢の体温を感じたい。 「今度は可愛い攻撃かよ。」 「可愛くはないだろ。」 「可愛いよ。和樹は、いつでも可愛い。」涼矢は和樹にキスをした。「ねえ、背中見せて。和樹の背中が見たい。」和樹は素直にうつぶせて、涼矢に背中を見せた。「好きだったな、この背骨。」涼矢は背骨に沿って指を這わせた。「部活の時、いつも触ってみたいと思ってた。」 「変態。」 「うん。そうだね。肩甲骨にキスしたいと思ってたし。」肩甲骨に唇をつけた。「良い腰してるなぁって思ってたし。」腰にもキス。「もちろん、お尻もね。ちょっと膝立てて。」和樹は膝を立てた。お尻を突き出す格好になり、恥ずかしかったが、妙に興奮した。涼矢は和樹のお尻にもキスをした。 「涼矢、これかなり恥ずかしいんだけど。」 「そうだよね、恥ずかしい格好だよね。ここ、丸見えだし。」涼矢は和樹の穴にいきなり指を当てた。 「うわ。ちょ、それは。」和樹は反射的に身を引こうとするが、涼矢は片手で腰を抑えてそれを許さない。それどころか、お尻を左右に開いて、その中心に舌を這わせた。「ひぁっ。」と和樹が声を上げる。「いきなりかよっ。」  涼矢は何も答えずにひたすらそこを舌先でつつき、舐め上げた。和樹がビクビクと体を震わせ、喘ぎ声を上げる。ひとしきりそこを唾液で濡らすと、涼矢は再び指で攻めはじめた。 「いきなりでもイケそうだよ? もう柔らかくなっちゃって。」 「…そ……そういう……、言う、な……よ。」和樹は身をよじらせながら言い返そうとするも、自分の喘ぎで遮られる。 「ローション取って。」涼矢が平然とそんなことを言うので、和樹は一瞬悔しそうな表情を浮かべたが、黙ってヘッドボードの引き出しからそれを出した。「ゴムは?」 「しなくていい。」 「いいの?」涼矢はローションを和樹のそこに垂らして、指でかき回した。 「あっ……やっ……。」すぐに反応する和樹。「しなくてっ……いいっ。……中に出して……ほし……。」  涼矢は指を抜き、その代わりにすぐにペニスを挿入した。 「ああっ。」和樹も腰を動かしはじめる。  涼矢は抜き差しを繰り返しつつ、少しずつ上体を前に倒し、和樹の背中に密着するようにした。「和樹、くっついたよ。」 「んっ。」背中に涼矢の体温と重みを感じる。 「大好き。」涼矢は背中にキスをする。 「俺も。」和樹は顔を後ろに向け、二人はキスをした。

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