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第135話 光射す、その先の。⑦
和樹が涼矢を愛撫する。涼矢も同様の行為を返しはするが、なんとなく和樹が主導し、涼矢は和樹に委ねるような流れだ。乳首を舐めると、涼矢の身体がピクリと反応した。でも、まだ喘ぐ声は聞こえない。和樹はそのまま舌で転がし続けながら、もうひとつの乳首を指で弄りはじめた。「んっ……。」という小さな喘ぎが聞こえた。
「可愛い。」和樹が呟く。涼矢は何も言わないが、気のせいか肌に赤みがさしてくる。執拗に乳首を刺激しながら、空いている片手で腰回りを撫でた。涼矢は、自分の手で口元を覆って、声を抑えようとした。和樹はその手をつかんで阻止した。「声、聞かせて。」
涼矢は抗わない。その直後から再開された和樹の愛撫に少しずつ吐く息を荒くさせた。和樹はひとしきり涼矢の全身を撫で、舌先でなぞる。涼矢の口から甘やかな声が漏れてきた。
和樹は身体を起こし、ローションを涼矢の下半身に注ぐと、涼矢のペニスをしごいた。
「あ。」涼矢が眉間にしわを寄せるが、痛みの反応ではないことは確かだ。
「自分でも触って。」和樹は涼矢の手をつかんで、自分の手と重ねたまま、しごきはじめた。
涼矢は少し恥ずかしそうにしながら、この半ば自慰のような行為をした。和樹は和樹で、それを続行しつつ、片手で自分のアナルをほぐした。
和樹は涼矢にコンドームをつけると、涼矢にまたがり、涼矢のそこに自分のアナルをあてがった。
「涼、これ、欲しい。いい?」
涼矢はゴクリと唾を飲み、「うん。」と言った。和樹はゆっくりと腰を落としていく。
「あっ……んっ…。」和樹が喘ぐ。その様子を見ている涼矢もまた、それに合わせるように喘いだ。
「全部入った……。」和樹が涼矢を見下ろして笑う。「まだ、動かないで。俺が動くから。」和樹はそう言い、自分の腰をゆっくり上下させはじめた。その動きで、涼矢のほうが「あっ、あっ」と喘ぎ声を上げた。和樹は涼矢のペニスを出し入れしながら、自分のペニスも握ってこする。涼矢の昂まりも限界に近づいて、目をつぶって絶頂に至らぬように我慢しているのが和樹の目にも見て取れた。
「気持ちい……」和樹が呟くと、涼矢が勢いよく和樹の腰をホールドした。
「動くよ。」涼矢はそう宣言して、自らの腰を動かして和樹を突き上げた。
「ああっ。」和樹が下からの突き上げに大きく声を上げる。
「和樹、気持ちいい?」
「うん、いい……。」
「俺も。」
二人は息を合わせてお互いの刺激を貪り、快感に喘いだ。
しばらくして、涼矢の動きが少しだけ鈍くなった。「和樹、イキそ。」
「ん。」和樹がうなずくと涼矢は射精した。「抜くな。」和樹は涼矢を自分の中に挿れたまま、自分のペニスをしごいた。「いい? ここに出しても。」そう言って涼矢の腹に触れる和樹は、コンドームをつけていない。
「いいよ。」
和樹が射精したのはそれから間もなくだった。涼矢の腹と胸に精液が散った。
「この視界、やばい。エロい。」和樹は息も整わないうちにそんなことを言った。涼矢の体が精液にまみれている。その裸の胸は荒い息のために上下している。涼矢は顔を斜めにして、流し目のような色っぽい目つきで和樹を見つめている。
ようやく和樹が涼矢のペニスを抜いた。そのまま雪崩れるように涼矢の隣に倒れこむと、「それ、拭いてやるから。ちょっとだけ休ませて。」と言った。
涼矢は手で胸を触り、指先についた白いものを確かめた。
「こんなほうまで飛んできたよ。元気だねえ。」
「当たり前だろ。」和樹はふう、とひとつ息を吐くと起き上がり、ティッシュで後始末をするが、涼矢の身体のべたつきがすっきりしない気がして、部屋を出て行った。勝手知ったる涼矢の家で、階下の洗面所でタオルをお湯で濡らして戻ってくる。部屋に入る直前に、昼食後に階段をのぼりながら、「この階段を上がるのもこれが最後かな」などと感傷的になっていた自分を思い出した。「最後も何も、彼氏のセーエキ拭くために上り下りしてるし」と、ひとりで笑ってしまう。
和樹がタオルで涼矢の身体を拭く。「サービスいいな。けど、自分でやるよ。」と涼矢が言う。「いいから。」和樹は差し伸べられた涼矢の手を押し返し、「別に、最後の大サービスじゃないからな。」と笑った。
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