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第25話 Lovers ②

「断ると思う?」と和樹は言い、その場でスマホを取り出し、何やら入力しはじめた。「いま、親に友達んち泊まるって言ったから。」  涼矢はホッとしたように微笑んだ。涼矢は日に日に表情豊かになっているように思うが、実際にそうなのか、和樹の読み取り能力が上がったのかは定かではない。 「お、早速返事来た。OKだって。」和樹はスマホの画面を涼矢に示した。一緒に画面をのぞきこみ、二人の顔が至近距離になり、そのままキスをした。 「どうしよう。すげえ、嬉しい。」涼矢は少女のように口元を両手で覆い、頬を染めて、そんなことを言った。 「おう、可愛いこと言ってくれるね。」 「なんか緊張してきた。」今度は表情をこわばらせている。 「なんでだよ。自分ちなのに。今まで泊まりに来た奴、いないの?」 「いるけど、違うだろ、その、関係性が。」 「関係性!」和樹はこらえきれずに笑い、涼矢はそんな和樹をにらんだ。「ごめんごめん。」和樹は軽く謝り、涼矢の背中に腕を回し、キスをした。「俺達、こういう関係だもんな?」  涼矢の顔が赤くなる。「馬鹿にしてるだろ。」 「してないよ。」和樹は涼矢の頭を撫でた。「涼矢、今日は一緒にお風呂入ろうな。」 「絶対、馬鹿にしてるし。」 「入らないの?」 「入るけど!」  和樹は大笑いして、また、涼矢にキスをした。  涼矢はむくれつつも、昨日和樹が置いて行ったお菓子類を大画面テレビの前のローテーブルに並べた。そして、和樹の意向も聞かずに、海外ドラマのブルーレイディスクを流しはじめた。二人で並んでソファに座ると、すっかりブルーレイを見る体勢ができあがった。 「このドラマ、好きなの? てか、いきなり途中なんだけど。」と和樹。 「うん。ええと、第6話。」 「俺、この先のストーリー知ってるよ。」 「だとしても、言うなよ。」 「なあ涼矢。」 「だから黙ってろって。」 「前に泊まった奴って、柳瀬?」 「違う。」 「誰。」 「イトコとか、中学の友達だよ。和樹の知らない奴。」 「おまえの部屋に泊まった?」 「ああ。てか、うるさい。」 「あのベッド使った?」  涼矢はリモコンでブルーレイを一時停止した。「なんなの、さっきから。」 「俺以外の奴があのベッドで寝たかと思うと腹立つ。」 「寝てないから。床に客用の布団敷いた。」 「あっそ。そんなら、まあ、許す。」  涼矢は、はあ、と深いため息をついた。「くだらねえ。」  和樹は一瞬ムッとしたが、すぐに笑いだした。「くだらねえよな、本当。」涼矢の耳をいじりだす。「ちょっと構って欲しくなっただけ。怒るなよ。」涼矢の首筋に口づける。 「こら。」涼矢はくすぐったそうに身をよじらせた。和樹は、すかさず涼矢の長袖Tシャツの裾から手を滑り込ませた。「おい、何やってんだよ。」 「いちゃいちゃしたいんだもん。」 「だもん、じゃねえよ。」 「じゃあいいよ、涼矢はテレビ見てなよ。こっちはこっちで勝手にやるから。」和樹は空いている左手でリモコンを操作し、わざとらしく再生ボタンを押した。 「はあ? 何言ってんだよ。……あ、ちょっと、おいっ!」  和樹は既に涼矢のTシャツを半分以上めくり、涼矢の上半身への愛撫とキスを繰り返していた。「こっちのことは、気にしないで。」 「馬鹿、そんなわけに行くか。」力なく和樹を押しやろうとする涼矢。 「なんで? 感じちゃう?」涼矢の乳首を刺激する和樹。涼矢は口元を固く結んで、必死に反応しないようにしているが、次第に頬が紅潮していく。やがて抵抗することをやめ、強く目をつぶり、自分の腕で自分の口をふさいだ。 「そんなんじゃテレビ見えないよ? 隠さないで。……声も。」和樹は涼矢の口元を覆う腕を外した。 「やっ……。」涼矢が上気した顔を横にそむける。  脇腹に細かく口づけを繰り返しながら、和樹は涼矢のズボンを脱がせにかかった。涼矢は特に抵抗しないが、そこでふと和樹の手が止まる。「こんな真っ白なソファ、汚したら、ママに怒られちゃうよね?」  涼矢は目を開けた。無言で和樹を押しのけ、テレビの電源を切り、ソファから起き上がると、「これ明日までに返却しなきゃいけなかったのに。」とブツブツ言いながら和樹を一睨みした。 「後でストーリー教えてやるよ。ピロートークで。」 「……うん。」涼矢は頭を和樹に預けた。その頭を和樹が撫でた。

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