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第27話 Lovers ④

 和樹は自分のものを握り、しごきはじめた。人前でそんなことをするのはもちろん初めてだ。羞恥で涼矢を見ることはできず目をつぶるが、時折薄眼を開けると、涼矢は同じ姿勢でじっと見ていた。そんなことが何度目だったかわからないが、途中から涼矢もパンツの中に自分の手を差し入れて動かしているのが見えた。「なん……だよ……二人でマスかいてんなら……普通に……やりゃいい……だろうが……。」息を切らせながら、和樹が訴える。 「そうだな。」涼矢が椅子から立ち上がる。パンツをずらして、中身を和樹の顔先につきだした。「しゃぶって。」 「おまえ……ひどい……。」和樹が手を出そうとすると、間髪いれずに涼矢の声が響いた。 「手はそのまま、自分の触って。口だけこっち。」涼矢は和樹の髪をつかみ、自分の股間に押し付けた。 「んんっ……」和樹は涼矢のいささか乱暴な行為に腹立ちを覚えたが、それ以上の快感に突き動かされていた。自分の手の中がさっきまでよりも熱い。口の中のものも。  しばらくそんなことを続けていた。涼矢はもう無理に押さえつけたりしていない。それでも、和樹は自ら積極的に涼矢のそれを口に含みながら、自分のものもしごいていた。既に限界に近かった。和樹は涼矢のそれを口から外した。「涼矢、もう、俺っ……。」 「うん。もうちょっとだけ我慢な。」涼矢はかがみこむようにして、和樹のアナルに手を伸ばした。「あれ、結構、大丈夫かな。でも一応ね。」涼矢はローションを持ってきて、そこに塗りこみ、指を挿入していった。「もう柔らかくなってる。和樹、意外とすぐ慣れたね?」 「おまえ、涼矢、そういう……あっ……はぁっ」涼矢の指の動きに、和樹の理性が崩されるのにそう時間はかからなかった。 「どうしてほしい?」 「……。」 「言わないとやめるけど。」涼矢が和樹の敏感な部分を責め、同時に前も握る。そのまま昂められてくかと思うと、中途半端なところで止まった。「イキたいでしょ?」 「……指…じゃなくて……涼矢の……来てほし……。」  その言葉を合図に、涼矢はゆっくりと和樹のそこに、硬くそそり立ったペニスを挿入した。 「涼っ!」和樹は涼矢の背中に手をまわして指先に力をこめた。自分の中をこじあけてくるもの。何度も、繰り返し。そのたびに快感が全身に走る。 「声、我慢しないで。」涼矢の声は、すぐ近くのはずなのに遠く聞こえた。無意識に歯を食いしばっていた自分に気が付く。「やっ……はぁ……りょう、や……どうしよ、気持ちいい……。」声に出してしまうと、もう、歯止めが効かなかった。和樹は激しく喘いだ。「涼、イキそ……もう……。」 「俺も。」涼矢が息を荒くする。  前後して果て、しばらく抱き合ったままでいた。  やがて、涼矢がベッドから滑り落ちるように降りた。何故か床に正座している。 「な、なんで正座?」 「このたびは……大変申し訳ないことを……。」涼矢は深々と頭を下げた。 「何が始まっているんだよ。」 「今の……引いたよね?」涼矢が恐る恐る顔を上げる。 「ひ、引いたっていうか……涼矢にああいうことできるんだって意外だったけど。でも、それより今そこで土下座していることのほうが全力で引くわ。」 「嫌いになった?」 「おまえそれ、本気で聞いてるの?」 「半々、かな。」 「嫌いになってないから、ふつうに戻って。」  涼矢は気まずそうに立ち上がり、ベッドの端に座った。和樹は背中側から涼矢に近寄り、耳元で囁く。「ああいうのが好きなんだ?」 「好きっていうか、一度、やってみたかったっていうか。ごめん。もうしない。」  和樹は耳たぶを唇に挟むようにキスをした。「もうしないの?」その耳たぶが瞬時に赤くなる。和樹は耳を舐めた。 「かず」振り向こうとする涼矢の両頬を引き寄せて、キスをした。 「わかってるだろ?」和樹は涼矢を諭すように言った。「良かったよ。」  涼矢はそれには返事をせず、赤い顔のまま立ち上がり「風呂、沸かしてくる。」と言って部屋を出て行った。

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