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第30話 Lovers ⑦

 挿入したまま、涼矢が言った。「和樹、前、触らなくてもイっちゃったね。そんなに気持ち良かった?」言われてみれば、和樹はずっと壁に両手をついていたし、涼矢の手も和樹のペニスには触れずじまいだった。恥ずかしさがこみあげて、何も言えない和樹だった。  また終わっていない涼矢が「もう少し、お尻、つきだして。」と和樹に指示をする。和樹が指示通りのポーズを取ると、動きやすくなった涼矢は出し入れを再開した。和樹はまたも喘がされる。間もなく、涼矢もフィニッシュを迎えた。 「洗ったばっかなのに、また中出しか。」強がる余裕が出てきた和樹が言う。 「風呂場で良かっただろ。」 「……次は、ゴムつけような。俺、今日持ってきてるから。」 「今、言う?」 「忘れてたんだよ。言うタイミングもなかったし。」和樹はシャワーで再び下半身を洗い流した。 「今日、がっついてたもんな。」 「俺だけかよ。」 「俺もだ。」涼矢は和樹にキスをした。  涼矢は一足早く浴室を出ると、バスタオルを手に戻ってきて、和樹の身体を拭き始めた。 「自分でやるよ。」と和樹がタオルを引っ張ったが、涼矢のほうも離さない。 「いいから、そのまま立ってて。」涼矢は丁寧に和樹の身体を拭いていく。 「な、何だよ、それ。」 「昨日も言ったけど、今も、夢みたいな気がしてる。妄想しすぎで夢と現実がゴッチャになってるのかなって。」 「俺、妄想?」 「妄想でしょ。和樹があんなエッチなわけがない。今見ている映像も俺の脳内に違いない。」 「ぶつぶつ言うなよ、怖いよ。第一、これ、現実。」 「現実かあ。」涼矢は和樹の前にひざまずき、下半身を拭く。 「なあ、自分で拭くから。」と和樹が再度言った。 「いや、これも俺の願望かなえてるシリーズの一つなんで。」 「何その妄想シリーズ。……おまえ、俺の身体拭くのが願望だったの?」 「うん。王子様のお世話をする下僕的な。」 「ホント気持ち悪いよ、涼矢。」 「自分でもそう思う。だから嫌なら言って。」 「嫌じゃないけど。」 「ん。」涼矢は和樹の太ももにキスをした。 「おい、何してんだ。」 「目の前にあったんで。」 「王子にそんなことしていいのかよ、下僕。」 「あ、その設定、やってくれんの?」 「やんねぇよ。」 「女王様でもいいよ?」  和樹は右足を上げ、涼矢の股間を軽く踏んだ。「お仕置きするぞ。」 「悪くない。」 「ヘンタイ。」言いながら、和樹は涼矢のペニスを器用に足指で挟んだ。 「三年も片思いしてりゃね、変態にもなるよ。あ、ちょっと和樹、それマジで来る。」涼矢は和樹の身体を拭く手を止めた。 「俺の足コキで勃つんだ。」 「だめ?」見上げる涼矢のもの欲しげな顔を見て、和樹は思わず目をそらす。 「無理無理無理。」和樹は足を離した。「俺、ダメなんだよ。相手が痛がる系っつうか、そういうの。」 「ジェントルマンだな。」涼矢はようやく立ち上がった。そして、いわゆる壁ドンの姿勢で和樹を追い込み、顔をのぞきこむ。「相手じゃなくて、自分が痛いのはいいの?」 「いや……あんまり激しいのは……。」  涼矢はプッと吹き出した。「そんなビビるなよ。和樹が嫌がることなんかしないから。」 「そうだっけ? 俺が嫌とかダメとか言っても、やめてくれなくない?」 「だって、あれは嫌がってないだろ。」涼矢は和樹にキスをした。舌をからめあった。

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