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第36話 愛しのきみ ⑤

 2人で果てた後、涼矢は和樹の上から下り、更にソファからも降りてカーペットに寝転がった。まだ息が整わない。 「イケた?」和樹もソファに寝そべったまま、顔だけを涼矢のほうに向けた。 「イッた。」涼矢は真上に位置する天井照明の眩しさを遮るかのように、目の上に自分の手を乗せ、荒い呼吸を続けていた。 「俺も。」  しばらくして落ち着いたかと思うと、涼矢は起き上がり、何も言わずに浴室に向かって行った。その後ろ姿を見送りつつ、そう言えば次はゴムを使おうと言ったのに使わずじまいだったと思い出す。もっとも、あんな風に「中に出せ」と煽られたら、たとえ覚えていてもそれどころではなかっただろう。  一人残された和樹は、敷いてあったバスタオルで適当に下半身を拭うと、下着だけを身につけて、ぼんやりとソファに座った。確かに、俺もイッた。涼矢の「中」は、確かに気持ち良かった。そう思いながらも、物足りなさを感じる。シャワーの水音に耳をすませ、涼矢がしばらく戻ってこないであろうことを確かめると、そっと下着に手を入れて、自分のアナルに指を置いた。ビクンと、身体が反応した。そんな自分と、さっき自分の上で、身をのけぞらせて快感に喘いでいた涼矢の姿が重なった。  そう、あの時の涼矢が感じていたはずの快感を、俺も、ここに。ここに、欲しかったんだ。涼矢の……。 『和樹、前、触らなくてもイっちゃったね。』  浴室での行為の時、涼矢に言われたセリフを思い出しながら、アナルの指にグッと力をこめると、そこから快感が湧きあがってきた。おいおい、俺の体、どうなっちゃったんだ。それにしても、涼矢だって、「前」は触っていたものの、ローションもなしで挿入してたよな。やけに手慣れた感じで自分でほぐしてたし。あれって、もしかして、涼矢も自分でこうして……涼矢の自慰を想像すると、昂奮してきた。その時、浴室の扉の開閉音が聞こえて、和樹は慌てて下着から手を出し、服を着て、さも初めからそうしていたかのような顔をして、きちんと座りなおした。 「おつかれー」リビングに戻ってきた涼矢に、和樹は言った。動揺を悟られたくないという思いが、必要以上に軽々しい口調にさせた。 「そっちも、おつかれ。」 「まったくだよ。涼矢、デカイし重いし。良い筋トレになったわ。」 「なるべく体重かけないようにしたんだけど、難しいね、騎乗位。」平然とそんなセリフを吐くようになった涼矢に、なぜか置いてきぼりにされた気がする和樹だった。

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