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第47話
「警察には連絡しない」
征治はきっぱりと言った。
「ええー、でもあの子、離れに住んでるんでしょ?私も時々ここに泊まるけど、母屋と廊下で繋がってるじゃない。こんな恐ろしい事する子と一緒に寝泊まりするなんて、恐ろしいわ。同じ離れで暮らしている女の人だって怖いと思うわあ」
征治が里香の方をきっと睨みつけたとき、重さんが横から征治に言った。
「しばらく、陽向は小屋の方で預かりますだ」
征治は頷いた。
「これはこの家のことだ。里香が口出しすることじゃない。恐ければもう来なければいい」
それから征治は周りの人間をぐるりと見渡していった。
「分かっていると思いますが、このことは他言無用でお願いします。さっき陽向を連れて行った岡野さんにもそれは念押ししておいてください。両親にはタイミングをみて俺が話します。特に母にはストレスを掛けないように気を遣ってやって下さい」
使用人たちが皆、真剣な顔をして頷く。
「里香、お前も余計なことを外で話すな」
「知らないわよ、そんなの」
「お前や叔母さんがうちの皿やなんかをちょくちょく持ち帰っているのは大目に見てやる。親切心から教えてやるが、今日お前がきれいだから欲しいなどと言っていた居間の花瓶は九谷の名工のもので200万以上する。すでに祖父から俺が相続済みで財産目録にも載っているから、あれを持ち帰るのはやめた方がいいぞ」
里香は目を見開き悔しそうに唇を噛んだが、使用人たちの目が自分に集まっていることに気付くと、つんとあごを上げ庭から出て行った。
先程の男衆が遠慮がちに聞いた。
「坊ちゃん、小太郎はどうしますか?市の方でも引き取ってくれると思うんですが・・・」
「いや、出来ればこの家の敷地に埋めてやりたいな」
庭師の重さんが傍に寄ってきて、言った。
「それはあんまりようないです。小さなハムスターぐらいならええんですが、小太郎くらいの大きさのもんが土に還るまでには時間がかかって、匂いやら衛生面やら問題やと思いますわ。カラスやなんかがほじくりだすっちゅうのも聞いたことありますな」
「そうですか・・・。ちょっとこっちでいい方法がないか調べてみます」
それからお手伝いさんに声を掛けた。
「このままでは小太郎がかわいそうです。上に何か掛けてやる物を持ってきてもらえませんか」
お手伝いさんたちが家の中に駆け込む。次は突っ立ている勝に声を掛ける。
「勝、俺は今から小太郎の埋葬方法を調べてくる。お前は、しばらく小太郎についていてやってくれるか?」
勝はふらふらと小太郎の亡骸の傍にやってきて、無言でじっと見下ろしていた。
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