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第64話
そんな中、あの日がやってきたんだ。
狂ったように金属バットを振り回す勝君の様子はもう尋常じゃなくて、とても僕の体じゃ止められないと思ったから「コタ、逃げろ!」って言ったのに・・・バットがあばらに当たって倒れて呻く僕の傍からコタは離れなくて・・・
気が付いたらコタは口から血を吐いて倒れていた。呼んでも反応が無いし息もしていなかった。
勝君はいつものように言い放った。「お前のせいだ、お前が悪いんだ!」って。
なんで?
征治さんとの散歩も断ったよ?
何がいけなかったの?
騒ぎを聞きつけて使用人や勝君の従妹が集まってきた。
また勝君が「お前のせいだ!」叫んで、皆が息を飲んでいるところに、征治さんが戻ってきた。
僕は征治さんに駆け寄って縋りつきたいのを必死で堪えた。
征治さん、コタが死んじゃった!助けてあげられなかった!僕たちの大切なコタが死んじゃったってその胸に飛び込んで泣きたかった。
でもその時、勝君が信じられないことを言ったんだ。
「陽向が、小太郎を殴り殺した」
え?
何を言っているの?
理解できずにいるうちに、征治さんが縁側から飛び降りてきて僕の肩を掴んで叫んだ。
「陽向!なんでこんなことしたんだ!こんな酷いことを!」
目の前が真っ暗になった。でも次の瞬間色んな映像や音が一気に押し寄せてきた。
僕がいくら違うと言っても「お父さんは自殺だよ」という大人、
「誰もわしのいう事を信じてくれんかった」という重さんの寂しそうな顔、
「お前は俺のいう事を聞いてればいいんだ」と凄む勝君、
「お母さんも自殺じゃない」と訴える僕に「わかったわかった」とうんざりした顔をする大人たち。
そして・・・呼びかけても振り返らず門から出て行った征治さん。
ボクハ、コタヲ、コロシタリシテナイ
そう言えばいい?
だけど、いつだって僕の言葉は届かない・・・誰にも届かない。
もう、征治さんにも届かないんだ。
急に呼吸の仕方が分からなくなった。
苦しい、苦しい、誰か助けて!
そのうち手も足も痺れてきて、体が硬直して・・・僕は気を失った。
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