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第109話

僕の幸せってなんだろう? 一部で秦野青嵐を幸せ探しの達人なんて言ってる人がいるのは知っているけど、自分のこととなると急に分からなくなる。 征治さんと再会するまで、ほんの4か月ほど前までは、カチコチだった僕の心を解してくれた吉沢さんが喜んでくれるなら彼の気持ちに応えてもいい、そうすればたった一人で生きていくよりきっと幸せになれるはずだと思っていた。 それが・・・僕の幸せ? ・・・人のスマホを無断で覗くような人でも? その時、ポケットの中で振動が起こり、メールの着信を告げる。予想通り吉沢さんからで『修理は済んでいた?まだだったら遠慮せずに今日も泊まりにおいで』とあった。 昨夜の暗闇の中に白く浮かび上がる吉沢さんの顔を思い出し、ぞっとする。 どうか修理がもう終わっていますように。 親愛の情を示すためには今日も甘えて泊まりに行った方がいいのかもしれないけど、今はちょっとそんな気になれなかった。 郵便受けの中に、ビルを管理している不動産屋の「修理完了しました」のお知らせを見つけたときは、正直ほっとした。 部屋に戻り吉沢さんに、修理が無事終わったことと昨夜のお礼のメールをうった。しばらくして届いた返信には 『無事に直ったのはよかったけど、僕としては残念だな。これからも、時々僕の家に遊びに来てくれると嬉しいよ』 とあり、今までの善き相談役といった立場から少し踏み込んできているのを感じる。 そういえば、昨夜は頬を撫でられ、髪を撫でられ、おでこにキスもされたんだった。 今夜も泊まりに行っていれば、次は何をするつもりだったのだろう。 唇にキス? それともセックス?

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