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第160話

「行き倒れかけていた僕に手を差し伸べてくれて、最初は親切だと思っていた人たちに、いつの間にか借金で雁字搦めにされ、それをカタに言いなりにさせられました。借金をチャラにしたければ、両目の角膜を売れと言われたけど、怖くて出来ませんでした」 最初からその気の悪い大人にかかれば、田舎の純な家出少年の扱いなど造作も無かっただろう。 「そいつらにとって18歳でありながらまるで子供の容姿の僕は格好の獲物だったようで・・・僕は風俗の店で働かせられるようになりました。あの頃の僕の見た目は、女性よりも男性に受けるということで・・・・・男性向けの男娼を・・・させられました」 陽向の声が少し震えている。テーブルの上に置かれている両手も強く力が入っているのが見て取れる。 陽向は今、征治にとてつもなく重い告白をしようとしているのだ。 覚悟を持ってちゃんと聞かなければならない。征治もテーブルの下で自分の両腿の上の拳を固く握った。 「でも、それを始めてすぐ、客の男性の恋人に浮気相手だと勘違いをされて、刺されてしまいました。僕はカタコトの日本語を話すもぐりの医者に連れていかれて命には別状はありませんでしたが、ヘマをしてしばらく仕事が出来ないことを酷く罵られました。 そんな時、前から僕を気に入っていた店のオーナーの知り合いが、僕を丸々買い取って面倒を見てくれるという話になって、僕は金持ちの変質者に売られました。痛み止めの薬と発熱で朦朧としている中で話を聞かされましたが、勿論僕に選択権なんて最初からあるわけが無かった。 僕のことを買った芹澤(せりざわ)という男は、僕に鍵付きの首輪と鎖をつけて完全にペットとして扱いました。僕が口をきけないのもそういう意味で都合がよかったんです。 機嫌のいい時は毛づくろいだと言って僕の全身を舐め、風呂に入れて磨き上げたりしました。同じ趣味の人間が集まる倶楽部があって、そこへ僕を連れていきギャラリーに見せびらかしました。僕が嫌がって暴れると変な薬を飲ませたり、首輪をきつく締めあげました。そして自分のものだと分からせるためにここに印をつけました」 そう言って自分の首の後ろを指さした。

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