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第196話
「ああ、ここだね」
「眼鏡屋さん?」
「ここでサングラスを買うんだ」
「ふうん」
「陽向のだよ?」
「え?どうして?僕、サングラスなんて掛けないし、そもそも似合わないよ」
「これから夏に一緒にドライブに行くときにいるよ。陽向みたいに顎のラインがスッとしているのは大体どんなのでも似合うんだ。それにね」
耳元に口を近づけて小声で言う。
「大きめの濃い色のサングラスを掛けてみてごらん。ぐっと印象が変わってマスクを外しても誰だかわからないよ?」
不安そうな目が征治を見上げる。
「一度試してみなよ。人が来ないか見張っててあげるから。ね?これなんか、どう?」
手渡したサングラスを持って困ったような顔をしていた陽向だったが、そろそろと周りの様子を窺ってからそっと伊達メガネとマスクを外した。
そしておもむろにグラスを掛けてみる。
「うーん?」
陽向に背を向け、人が近づかないか周囲に視線を走らせていた征治の耳に届いた小さな呟きに振り返ると、陽向が鏡を見ながら困惑していた。
「なんだか僕じゃないみたい。すごく気障じゃない?恥ずかしいよ」
「何言ってるの、すごく似合ってるよ。モデルみたいだよ?ああ、でも思った以上に陽向の顔が小さいからこっちの方がいいかも。色も真っ黒よりこっちかな?」
一回り小ぶりの濃いブラウンのデザインも2種類ほど試してもらう。
横から一緒に鏡を覗き、続いて自分の方にも向かせて確認する。
「陽向・・・すごくいいよ。かっこいい」
お世辞ではなかった。
元々、陽向はすっと鼻筋の通った整った顔立ちをしているし、細い顎がフレームのデザインと絶妙なバランスをとっている。
そして透明感のある白い肌が濃い色のサングラスとのコントラストで更に際立ち、優し気な目元が隠れているせいで甘さが消え、クールな印象に変わる。
髪が長いせいもあって、本当にタレントか何かのようだ。
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