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第208話

「千春には俺から言った方がいいのか?」 「もし聞かれたら、相手がいるとだけ。俺は公表しても全然構わないんですが、陽向がまだオープンにすることを迷っているので。 千春ちゃんは、僕が直接告白されたらちゃんと断るつもりでいます。ただ、外堀から埋められてしまうのは辛いと思って。先日、奥様の方からも遊びに来てとご連絡いただきましたし」 「親父もお袋もお前を気に入ってるからなあ。勿論、俺もだ。それを分かってて、お前もよく賭けに出たね。まったく俺も信用されたもんだよ」 「ええ、信用してますよ。とても」 カチンと紹興酒のグラスを合わせ、二人は笑顔を交わした。 その後はアルコールが進んだこともあり、楽しい談笑が続いた。 山瀬が、一時はハートが凍りついたままの征治を本当に心配していたが、これで安心できるとか、桂花陳酒のソーダ割りを気に入ってほんのり頬をピンクにしてにこにこしている陽向が可愛すぎるだろう、本当に成人男性なのかとか、機嫌よく話し続ける。 「これで社内外の征治狙いの女子達の目がやっと他の男の方へ向くから、野郎どもが喜ぶぞ」 と山瀬が笑えば、 「征治さんはやっぱり・・・モテるんですよね?」 と、少々酔っ払い気味な陽向が控えめながらも話題に食いつき、山瀬が陽向をからかって遊ぶ。 征治はそんな酔っ払い二人の世話を焼きつつ、残業している部下の泣きの入った問い合わせに指示を出し、追加オーダーを取りと、忙しくも楽しい時間を過ごした。 山瀬をタクシーに乗せ、自分たちは地下鉄に乗って帰ろうとする征治に 「こんな可愛い酔っ払い、金曜の夜の電車に載せたら危ないだろうが。お前らもタクシーで帰れ」 と、1万円札を押し付け、山瀬は帰っていった。

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