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第212話

陽向からスプーンを取り上げようとしたが、手元が狂い、スプーンはカランカランと音を立てテーブルの下に転がり落ちた。 二人してその様子を目で追う。 陽向がスプーンを拾おうと伸ばしかけた手を、掴んで止めた。 征治を振り返り、首を傾げ、ゆっくりとした瞬きで「なぜ?」と伝えてくる陽向は、まるであざとさは無いのにとても魅惑的だった。 征治は自分の人差し指をジュレのカップに突っ込み、引き抜いたジュレまみれのそれを陽向の口元に差し出した。 陽向の頬にさっと赤みがさす。 頭の中で、何をしているんだ、やめろ、という声が聞こえているのに、体は勝手に指を陽向の唇に触れるか触れないかまで近づけた。 陽向はジュレをまとってテラテラと光る征治の指を瞳を揺らして見た後、おずおずと口を開いて咥えこんだ。 熱く滑る口中の感覚と、うっとりした表情で征治の指を口に含む陽向の姿に、カッと体温が上がるような疼きが起こる。 駄目だ、やめろ、これ以上は。 自分に言い聞かせたその矢先、征治の指の周りにぐちゅりと陽向の舌が絡みついた。 下腹に熱を呼びそうな刺激に慌てて指を引き抜いた。 だが、今度は陽向がジュレを絡めた指を征治の前に差し出してきた。 征治の頭で警鐘が鳴り始めている。これを含んだら、もう踏みとどまれなくなる気がする。 唇を開けないせいで陽向の指からジュレが滑り落ち、征治の唇から顎にとろりと伝い始めた。 すると、困ったような拗ねたような顔をした陽向がゆっくりと身を乗り出してくる。 そのまま征治の顔に自分の顔を近づけ、征治の顎のジュレを舌でそうっと舐め取った。 びりりと征治の脊髄に電流が流れる。 次はもう少し上の唇の際を陽向の温かい舌が這った。 息をすることも忘れ、目を見開いて至近距離から陽向の顔を見つめていた征治の内部に、沸々と熱いものが湧き始めた。 「陽向・・・」 掠れた声で呼ぶと、陽向が目を上げた。

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