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第213話

見たことがない色がそこにはあった。 陽向の中に初めて見る艶と色気にくらくらする。 そのくせ、自分が何をしたか分かっていないような邪気のない表情を見せる陽向に、戸惑い混乱する。 征治は陽向の手首を掴むと、ぐっと押し返すようにジュレまみれの指を陽向の唇に押し当てた。そして、それに自分の唇を覆うように被せる。 舌で陽向の指をなぞり、ジュレを舐めあげると、陽向の体がぶるりと震えたのが分かった。やがて、反対側から陽向も舌をのぞかせ、征治を真似始める。 そして、お互いの舌が触れ合ってしまったら、もう駄目だった。 征治は両手で陽向の頭を挟み、陽向の唇を奪う。 舌を差し入れ、最初軽く先を触れ合わせお互いの存在を確認すると、徐々に奥まで侵入し、陽向の舌を誘い出す。躊躇いがちに応えたそれに自分の物を絡み合わせ、吸い上げる。 もっと、もっとだ。 次第にむさぼるように深いものになっていくキスに、陽向もぎこちないながらも征治のTシャツの胸元に縋り付き応えようとする。 ぴちゃぴちゃという音と「ん・・・」と陽向の喉から漏れる微かな声、「んふっ」と陽向が溢す吐息が静かな部屋に響く。 それが益々征治を高まらせる刺激となった。 次第に征治の舌は大胆さを増して、陽向の口中をまさぐり蹂躙する。 同時に、どんどん内部に溜まっていく熱に、ここまでだ、ここでやめないと止まれなくなると赤く変わったランプが知らせてくる。 だが、あまりにも気持ちがよくて、止まることが出来ない。 その時、征治のTシャツを握りしめていた陽向の手が緩み、やがて両腕がずるりと下に落ちた。 「・・・陽向?」 唇を離し、陽向の様子を窺う。 力が抜けたように、くたりと身をソファーの背凭れに預ける陽向に、今になって悪酔いしてしまったのかと心配になった。 「大丈夫?」 だが、その濡れた赤い唇から漏れたのは「はぅん・・・」という限りなく甘い吐息だった。 「征治さん・・・」と目を潤ませて名を呼ぶ上気した陽向の顔は、誘うような色香を放っている。 恋人にこんな顔をされて踏みとどまれる奴が一体どれぐらいいると言うのか。 その上、陽向が両手を征治の首に回し甘えるように抱きついてきた。征治も両腕で陽向を抱きしめる。 ああ、俺の陽向・・・俺の可愛い陽向・・・ すぐ目の前にある陽向の桜色の細い首筋にかぶり付きたい衝動を覚え、鼻をうずめた時、うなじのタトゥーが目に飛び込んできた。

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