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第224話
このまま終わりになればいい。
目が覚めなければいい。
その願いはまた叶わず、一度ピリオドが打たれた悪夢は、第二章に入った。
ようやく意識がハッキリしたときには、比喩ではない首輪がつけられていた。
厚く固い革と金属でできた鍵付きの首輪。時々、そこに金属の長い鎖がつけられる。
その先を握っているのは、自分はお前の飼い主だという男。
事務所で店のオーナー達と話しているのを見掛けた気がする。
意識が朦朧としている間に運び込まれ今暮らしているのは、芹澤という男のマンションのようだ。
陽向が自由に行き来してよいのは大きなクローゼットがついた寝室と隣の広いリビング、そしてバス・トイレ。
このフロアにはこれだけで、普段は鍵が掛かっているリビングの扉を開けると下に降りる内階段がある。
内、外両側から電子ロックをつけられた扉から入って来るのは、芹澤と、食事を届け部屋の掃除に来る家政婦らしき年配の女性だけだった。
階下にはもっと広い住戸があって、芹澤が使用人を使って住んでいるようだった。メゾネットタイプという造りなのだということは後に知った。
つまり、ここから直接外に通じる扉が無いということだ。
「ペットの部屋がこんなに広いなんて、贅沢だろう?」
リビングのソファーで自分の膝の上に裸の陽向を横抱きするように座らせ、白い腹を撫でながら言う。
最初、この男のことが分からず戸惑った。
ペットって?性奴隷ということなのか?
それならこの脇腹の傷が塞がればすぐに襲い掛かられるのだろうと思っていた。屈強な大柄な男の相手はさぞかし大変だろう。
だが、芹澤は毛づくろいだと言って陽向の全身を舐めまわしたり、今のように裸の陽向を抱いて撫でたりする以外は今のところ何もしてこない。普段はちゃんと服も着せてくれる。
室内犬や猫のように、本当に愛玩動物なのか?
「ブランは可愛いし、大人しくていい。前のは無駄吠えが多くてな」
芹澤は僕のことをブランと呼ぶ。
「色が真っ白で綺麗だからな。フランス語だぞ、洒落てるだろ」
つまりシロだ。どうかと思うが、金は持っていそうだが、普段から知性は感じさせないこの男にしては精一杯お洒落な名前を付けたつもりなのかも知れなかった。
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