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第227話

芹澤が会員になっているという倶楽部のパーティーへ行く日。芹澤は膝丈のコートを手に上機嫌で部屋へやって来た。 またTバックから自分の手で着せてゆく。衣装を着たところでポケットから取り出したシルバーの鎖を陽向の首の金具に取り付ける。そして鎖の先をコートの左袖に通してから、陽向に着せた。 ボタンを留めてしまえば、へんてこな服も鎖も見えない。左袖から垂れ下がっている鎖の先の輪っかは芹澤の右手というわけだ。 芹澤に連れられ階下に降りると、芹澤よりさらにごつい体のスキンヘッドの男が待っていた。どうやら、ボディガード兼ドライバーらしく、前に一度この部屋を出て傷口の抜糸に連れていかれたときもこの男が運転していた。 会場に向かう車の中で陽向の不安は膨らんでゆく。一体どんなパーティーなのか?この恥ずかしい衣装でたくさんの人の目に晒されるのか? それを感じ取ったのか、芹澤が説明を始めた。 芹澤と同じ様に人をペットとして愛好する趣味の者が集う高級会員制の倶楽部であること。 自分のペットを持てるのは限られた人間で、人のペットを鑑賞するだけの会員もいること。 飼い主の中には会場でペットを貸し出すものもいて、借りた会員は個室に連れ込んで好きに出来ること。場合によっては、飼い主がその行為を鑑賞して楽しむ場合もあること。 飼い主が男女のペット同士を会員の前で「交配」させるイベントを組むこともあること。 話を聞くにつれ青ざめる陽向に、 「心配しなくてもブランを貸し出したりしない。お触りまでだな」 と、頬を撫でながらよく分からないことを言った。 それでもなお、体を強張らせる陽向の口に「これを飲んでおけ、リラックスできる」と錠剤を押し込み、ペットボトルの水を流し込んだ。 暫くするとぐるぐると渦巻いていた不安がどこかへいってしまい、なんだかふわふわと浮足立つような気分になってきた。 何かドラッグを飲まされたに違いないと分かったが、もう集中して物事を考えられなくなっていた。

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