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第228話
クラブを貸し切りにしたらしい会場の受付で、陽向はシルバーのブレスレッドを付けられた。ゴールドのブレスレッドは貸出OK、シルバーはボディタッチまでならOKという意味らしい。
会場に入ると、中にはかなりの人数が居て、妖しげな熱気に溢れていた。会員の中にはまるで仮面舞踏会のように目元をアイマスクで隠している者もいる。
皆一様に首輪と鎖を付けられたペット達のいでたちは様々で、セーラー服を着せられたり耳や尻尾をつけられた女性もいれば、ハードなボンテージファッションの男性もいる。
「芹澤さんが新しいペットを連れてきた」
入り口付近で始まったそんな囁きがどんどん拡がっていく。どうやら、芹澤はここではかなり顔が売れているらしい。
自慢げに胸を反らし、鎖を引いてフロアの中心へ向かって歩き出すと、次々と声を掛けられ、いつの間にかたくさんの人に取り囲まれていた。
「芹澤さん、これまたえらく綺麗な子を連れてるね」
「色が白いね。この子、国産?」
「男の子だよね?もう声変わりしてる?」
「この子は鳴かないんだよ」
と芹澤が陽向の喉を撫でると、
「完璧じゃないか」と羨望の溜息が一斉に漏れる。
「残念、ゴールドじゃないのか」
ブレスレッドを確認した会員が、手を伸ばし薄いブラウスの胸を撫でると、それを皮切りに次々と手が伸びてきて、パンツの隙間から尻を触ったり、腿を撫でたり、中には股間まで触って来る奴もいる。
怯えた陽向が助けを求めるように芹澤を見上げると、デレデレと鼻の下を伸ばした芹澤は
「おいおい、お手柔らかに頼むよ。ブランは今日が初めてなんだから」
と大げさなポーズで言い、「ブランちゃん、可愛いねえ」と言われるたび、満面の笑みを浮かべた。
フロア中を連れまわし、賛辞をたっぷり堪能したらしい芹澤に休憩しようとソファーに連れていかれる。
どっかと足を開いて座った芹澤は、陽向に片方の腿の上に座り、奥側の腕を芹澤の首に回せと言った。なるほど、そうするとペットが飼い主に甘えて抱きついている様に見える訳だ。
芹澤は巡回しているボーイを呼び止め、トレーの上からドリンクを取り、陽向に手渡した。
「ブラン、言ったとおりだろ?お前は注目の的だ。俺も鼻が高い」
陽向の腰に回した手で脇腹を撫でながら、ご満悦だ。
陽向は会場の暑さのせいか喉が渇いていたので、ソーダを半分ぐらい一気に飲んだ。
「芹澤さん、どうも」
声を掛けてきた顔見知りらしい男性が、隣に座る。この男もペット連れだ。グラマーな美女を連れている。
彼女は慣れた様子で自ら飼い主の膝に乗り両腕を首に回して噛り付く。そして、飼い主の頬にチュッチュッとキスを繰り返している。
飼い主同士は既に話が盛り上がっているようだ。
目の前の彼女の行動に、陽向は周りを見回して観察をしてみた。
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