229 / 276
第229話
どうやら、ペットは3種類に分けられそうだ。
恋人同士かそれに近い関係でこのシチュエーションを楽しんでいる者。多分、目の前の彼女はそうだ。
コンパニオン的なペット。容姿端麗でやたらと外に向けて笑顔を振りまいているが、飼い主との親密度は低い。飼い主がパーティーのために雇っているのではないか。
そして、本当にペットとして隷属させられている者。皆一様に、陰がある。そして、飼い主に共通する傲慢さがある。
あれ?僕も隷属させられているペットだよな?
だが、彼らの飼い主が見せつける様に無理やり鎖を引いたり、色々命令しているのに、芹澤は・・・そんなことしないよな?
そう思い、芹澤の顔を改めてまじまじと見つめていると、視線に気が付いた芹澤がこちらを見て、「おい、大丈夫か」と声をあげた。
そして、陽向の手からグラスを取り上げ残っていたソーダを飲むと顔を顰めた。
「まずい、これは酒だ。ブラン、酔ってないか?顔、真っ赤だぞ。ああ、足までピンク色だ」
「目がトロンとしちゃってるよ」
隣の席の男が言えば、ペットの女性が「はい、お水」と手渡してくれる。
ちゃんと飲んだつもりだったのに、口の横からこぼれて、ブラウスを濡らしてしまった。
怒られると思って縮こまると、芹澤は「気にするな」と鷹揚にいい、周りに「悪いが帰る」と言ったかと思うと、陽向を横抱きにして立ち上がった。
驚いて降りようとするが、「大人しくしろ」と一喝され、急に酔いも回ってきてくらくらする頭を芹澤の肩にもたせ掛けると、「いい子だ」という嬉しそうな声が返って来た。
陽向を抱きかかえ、のっしのっしとフロアを突っ切る姿に、あちこちから「いいなあ」「羨ましい」という声が聞こえた。
マンションに着くころには、少しふらつくものの支えられながら歩けるようになったが、芹澤は陽向の部屋へ上る内階段は危ないと、ボディーガードの男に抱いて上るように指示し自分は電子ロックを解除した。
ベッドまで陽向を運ばせると、「お前ももう上がっていい」と言い渡している。
ボディーガードが部屋を出ていくと、陽向の衣装を脱がせ始めた。
「薬と酒の相性が良くなかったな。だが、今夜のお前は本当に素晴らしかった。今のピンク色の肌も堪らないがな」
そう言うと、キスをしてきた。芹澤がこんなことするのは初めてだ、とアルコールと煙草の匂いを感じながらぼんやりする頭で思う。
「疲れているだろうが、色んな奴に触られたからな。俺が全部綺麗に拭ってやるから寝てていいぞ。その前にちょっとだけな」
陽向の胸を芹澤の舌が這う。ああ、毛づくろいだ、そんなことを考えながら陽向は引きずり込まれるように眠りに落ちていった。
ともだちにシェアしよう!