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第231話

「はっ、んぐっ」 獣のような呻き声とともに陽向の腹に熱いしぶきが散らされ、青臭い匂いが立ち上った。 「ふう、それじゃあじっくり後ろもいただこうか。暴れんな。ちゃんとゴム付けてやるから。病気うつされんのも怖いしな。芹澤さんにはバレねえよ。お前が黙ってりゃな、ってお前口きけねえじゃん」 男が一人で馬鹿笑いをしたその時、バンッと大きな音を立ててドアが開いた。男が驚いてベッドから飛びすさる。 ドアの前には、芹澤がゴルフクラブを手に憤怒の表情で仁王立ちしていた。 「どういうことだ」 地を這うような声で芹澤が問う。 「あ、いや、上から大きな物音が聞こえたんで、様子を見に来たら・・・こいつが裸になって誘ってきやがって。でも、ま、まだやってません」 芹澤が鬼の形相で陽向を睨む。 そして、ゴルフクラブを大きく振り上げるのが視界に入り、陽向は目を閉じた。 『ああ、やっぱり僕はまた信じてもらえないんだ』 ヒュッと空を切る音がして、覚悟を決めた。 だが「ウグッ」と呻いて倒れたのはスキンヘッドの方だった。 「お前、どうやって暗証番号知ったんだ。・・・ああ、パーティーの夜か。チッ、番号変更しておくべきだった。今すぐ出ていけ!でないと次は頭かち割るぞ!」 男はベルトを掴み、ほうほうの体で逃げ出していった。 芹澤が強張った顔のまま近づいてくる。 「ブラン、出したのか」 意味が分からず戸惑っていると、「出したのかって聞いてんだ!」と怒鳴りつけ、陽向の両足首を掴んむと、がっと開いた。 そして蕾を確認すると、足を放り出した。 「俺が舐めてやっても咥えてやっても出さなかったじゃねえか!お前も俺がインポだからってバカにしてんのか!」 大きな手でいきなり頬を張られ、頭にチカチカと星が飛ぶ。 ああ、腹の上の白濁を陽向のものだと勘違いしているのか。まあ、誰のものかなんて見分けつかないよな。くらくらする頭で考える。 それから、小一時間近く芹澤は 「売り専だから、ケツがうずいて仕方がねえってか!淫乱め!好きなだけバイブでもなんでも突っ込んでやる!」 「あのクソババア、何一つ親らしいことしなかったくせに、ろくでもねえ遺伝子残しやがって!」 「あの野郎、ただじゃおかねえ。耳切り落としてやる!」 などと喚きながらゴルフクラブを振り回し続けた。 陽向はボコ、ボコと壁にいくつも穴が開いていくのをただ見ているしかできなかった。

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