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第233話
それから2日間、陽向は部屋から出され芹澤の寝室へ閉じ込められた。穴だらけになった陽向の部屋の修繕をするため、業者を入れるからだ。
首輪にリードを付けられ、その先はベッドの脚に南京錠で固定されている。首輪を付けられ閉じ込められていたと言っても、ワンフロアを自由に動き回れていたときに比べ、本当に犬にでもなったようだ。
芹澤のベッドに入る気にもなれず、何もすることが無いまま床のラグに座り続けていると、ペットという自分の立場を再認識させられた。
あの事件を境に芹澤の態度は一変した。
以前のような鷹揚な飼い主の振る舞いが消え、仏頂面に言葉遣いが粗野なものになったのは、もう仮面が剥がれ取り繕う必要がなくなったからか。
だが、「淫乱な犬」と暴言を吐いたそのすぐ後に、「来い」と呼びつけ膝の上に抱きあげ、ぎゅうぎゅう抱き締めてきたりする。
改装が終わった部屋に戻された陽向は驚いた。
勿論、壁の穴は補修され、真新しい壁紙が張られていたが、入り口のドアとリビング、ベッドルームに大仰な監視カメラが設置されていた。
二度目のパーティーに連れていくと言われて、抵抗した。
前回はクスリを盛られていたせいでよく分からなくなっていたが、あとから冷静になれば露出の多い衣装を着せられ、鎖でつながれ多くの目に晒られたことにぞっとしたのだ。
もう絶対にごめんだと思ったが、飼い主はペットの意見は聞く気が無いようで、当日も無理やり鼻をつまんで口に錠剤を押し込まれた。
二度目はもっとたくさんの人に取り囲まれた。一度目のパーティーで噂をよんでいたらしい。
芹澤は散々フロア内を陽向を曳いて回り、お世辞を並べられ満足したはずだ。これで少しはこのところのイライラは解消されたのではないかと思われた。
だが、家に帰りついた芹澤の機嫌はすこぶる悪かった。
陽向をベッドに押し倒し、上から睨みつける。
「今夜だけで3人もお前を譲ってくれという奴がいた。お前、俺の目を盗んでそいつらに媚びを売ってたんじゃねえだろうな」
とんだ言いがかりだ。ずっと鎖を短く持って傍から離さなかったではないか。
「突っ込んでくれる飼い主の方がいいってか。バカにしやがって。代わりにこれで存分に可愛がってやるよ」
いつのまに用意されていたのかベッドサイドのチェストから怪しげな道具の数々を持ち出す姿を見て、青ざめる。
思わずベッドの隅に逃げようとして、むんずと首輪を掴まれ引きずられる。苦しくてイヤイヤと首を振るが
「誰がお前の飼い主か教えてやる」
と目の座った男に、その夜は散々道具を使って責められた。
無理やり開かれた傷みと、感じるところを執拗に責められ半ば意識を飛ばした陽向を抱き締めながら「ブラン、すまん・・・すまん」と繰り返す男は、いったい陽向をどうしたいのかよく分からなかった。
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