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第236話
昼間に一人でいつもの様に開かない窓から外を眺めていて、よくシンジもそうしていたことを思い出した。
どちらも開かない窓ながら、あの時とは違うのはこの部屋が3階ではなく7階であるということ。
この高さでは窓が開いたとしても逃げ出せないと思っていたが、逆に言えば十分な高さがあるということだ。
部屋の中をぐるりと見まわして、適当なものを探す。テレビとエアコンのリモコンぐらいしか見当たらず、とりあえずその二つをもって窓に近づく。
まずはテレビのリモコンを持ってガラスに叩きつけてみた。ガラスにはヒビ一つ入らずリモコンがバラバラになっただけだった。
今度は少し離れたところから、エアコンのリモコンを野球ボールのように投げつけてみたが結果は同じだった。
もっと重さのあるものを探して、部屋中をウロウロし、バスルームからドライヤーを持ち出した。
それをピッチャーよろしく大きく振りかぶって渾身の力で投げつけた。
当たったところを中心にピキと数本ヒビが入った。プラスチック部分が割れたドライヤーを拾い上げ、ヒビの入ったところに繰り返し打ち付ける。さらに数本のヒビが入ったところで、ドライヤーもバラバラになってしまった。仕方がないので拳を打ち付けるがガラスは割れない。
何故割れないのだろう。やっとそこに思い至る。
ああ、そうか。中に樹脂が入っているのだ。慶田盛の大旦那様が亡くなったあと、旦那様が離れを改装するときに防犯性の高いそういうガラスに取り換えていたことを唐突に思い出した。
では、拳などでは無理だ。
リビングの大きなテーブルをズルズルと引き摺ってきて、脚をガラスに向けて立てかけ、思い切りぶつけると、ヒビの中心だったところにメリと脚の一部が食い込んだ。
何度か繰り返せば破れるかもしれない。
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