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第243話

「ねえ、陽向。俺はついついキスやそれ以上のことをしたくなっちゃったりするけど、それは陽向のことが愛しすぎるからだから。本当はそういう事がなくったって、構わないんだ。陽向がずっと傍にいてくれれば」 驚いて征治さんを見上げると、穏やかに微笑んでいる顔があった。 「話を聞く限り、陽向は男とのセックスを酷く嫌悪しているだろ?陽向が嫌なことはしたくないから」 「僕、もう一つ告白したいことがあったんだけど・・・その前に征治さんに質問してもいい?」 「ん?」 「あの、征治さんは・・・男とセッ、そういう事したこと、あるの?」 「・・・ないよ」 自分で質問しておきながら、僕はどういう答えを期待していたのか。 急に不安になった。 「じゃあ・・・本当は女性の方が好き?」 そう尋ねると、征治さんは大きな手で顔を覆って「ん~」と呻った。 その姿を見てますます不安になった。 これだけ魅力的な人なのだ。女性にもてることは山瀬さんも言っていたけど、その気のある男性からのアプローチだってきっとたくさんあったに違いない。 そういえば、征治さんは今までたくさんキスをくれたけど、全部唇以外のところだった。初めて唇を合わせたのは僕からだった。 昨日は・・・お酒も入っていたし・・・。 それに、恋人同士のはずなのにキスより先には進もうとしない。もしかしたら・・・ 「陽向」 征治さんに人差し指で眉間をぐりぐり押されて我に返った。 「何か変な事考えてない?ここに凄い皺が寄ってたよ。質問の答えだけど、俺はね、多分男女の境が無いんだと思う」 だけど、男性とは経験がないんだよね?じゃあ・・・ 「陽向はどうなのかな?」 この質問は前に吉沢さんからもされたことがある。だけど、答えはあの時と少し違う。 「僕は、正直よく分からない。女性とはキスすらしたことが無いよ。僕の周りに女の子がいたのは高校生までだったけど、性的成長も遅かったし、征治さんの事で頭がいっぱいで女の子のことが入り込む余地は全然なかった。 慶田盛家を出てからは見事に男しかいない世界で買われる立場に追い込まれたから。 二十歳になる前には男性機能も失ってしまったし、男女問わずそういう衝動もなくなったと思ってた」 「思ってた?」 「うん。ここからが、もう一つ告白したいことだったんだけど・・・」 そう言っている間に、かああと顔が熱くなってきた。 いつもの赤面症が出ていると思う。

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