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第259話
ゆっくり押し倒し、覆いかぶさるようにして見下ろすと、潤んだ瞳でこちらを見つめ返していた陽向が、「うゎぁ」と言いながら両手で顔を隠してしまった。
「陽向。顔見せて」
耳元で囁くと、やがてゆるゆると手が下に下りていく。
「ああ、陽向。可愛いな」
長めの髪が枕に散って、すっきりとした顔の輪郭が露わになる。
「大きくて優しいこの目も、すっとした鼻も」
瞼にキスをして人差し指で鼻筋をゆっくりなぞる。
「この柔らかいピンクの唇も」
親指を中央から口角へ向けて滑らせる。
「この白い肌も、柔らかいくせ毛も」
手のひら全体で頬を包み、指を髪に差し入れて梳く。
「全部、可愛い。だけど、恥ずかしがり屋で、すぐに耳まで真っ赤になっちゃうところや・・・」
耳朶を唇で挟むと、陽向がくすぐったそうに肩をすくめた。
「まだ上手に甘えられなくて、自分からはハグするのが精いっぱいなところ、花村さんにやきもち焼いたことを自分でもよく分かっていないところは、もっともっと可愛い」
陽向が少し首を傾げ、「やきもち・・・?」と目を瞬かせている。
「俺だって陽向をもう誰にも取られたくない。陽向を護るためにはなんだってしたい。だから、もっと自信を持って。だけど陽向を不安にさせたのなら、そうさせた俺の責任だね」
ゆるゆると陽向は首を振った。
「征治さんのせいじゃない。僕が征治さんを好きすぎて、ちょっとおかしくなってただけ」
ああ、また可愛いことを言ってくれる。
「陽向、キスしたい」
陽向からはぁ・・・という甘い息が漏れ、長い睫毛に縁どられた瞼がゆっくりと閉じていく。
目の前の奇麗な形をした唇をチュッと啄んだ。次は唇の端にチュッ。その次は自分の唇で陽向の柔らかい唇を包み込むようにして、少し吸いながらその質感を味わう。
舌で下唇を横にすうっとなぞると、陽向が少し体を震わせた。
上唇と下唇の間に舌を差し入れると、いいよと言うように少し隙間が開いた。すかさず侵入して陽向の舌を捕まえにいく。
まるで陽向そのもののようにためらいがちに征治の舌に触れてくるそれを絡めとる。おいで、怖くない、もっと触れ合って気持ちよくなろう。
ゆっくりこすりあわせ、吸い上げ、舌下を刺激する。
陽向から「んふ・・・」と甘い吐息が零れ、胸が上下しはじめた。両手がそろそろと動いて征治のTシャツの脇を握りしめる。
一度唇を離して、上気した顔を窺う。
「大丈夫だね?気持ちいいね」
「気持ちいい。・・・もっとしてほしい」
いきなり下半身にぐっときた。
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