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第260話

さっきよりも少し激しく唇を奪う。今度はすぐに陽向も舌を絡めてきた。 そうだよ、二人で一緒に感じ合おう。それが伝わったかのように、陽向の舌が征治の舌の動きに応え、それらは生き物のように絡み合う。 いつの間にか陽向の手は征治の背中に回り、しがみつく様な格好になっている。お互いに貪りあうのに夢中になった。 ああ、俺の可愛い陽向。 陽向が俺を欲しがってくれているのが全身から感じられて、歓喜に胸が震える。 俺も生まれて初めて本当に愛しい相手を抱くのだ。俺のこの喜びも陽向に伝わるといい。 必ず俺が陽向の辛い記憶を上書きしてやるから。俺とお前の交わりは、単なる欲の吐き出しではなく、愛の延長上にある行為だと分からせてやるから。 「・・んん・・・」 何とも色っぽい声にクラクラする。 「陽向、嫌な感じしない?」 こめかみの横の髪を梳いてやりながら、確認する。 陽向はゆっくりと瞼を開いて、うっとりとした表情で見返してくる。 「もっとしていい?陽向に触れてもいい?」 小さく頷く陽向のTシャツを脱がせた。少し迷ったが、自分も上半身裸になった。 「陽向、凄く綺麗だ」 骨格は華奢だが、欠かさないジョギングのおかげか、ちゃんとしなやかな筋肉を纏った体だ。そしてすべすべした滑らかな肌と淡い色の胸の印。 「征治さん・・・かっこいい」 大胸筋に触れながらそんな風に言ってもらえるなら、中学からのテニス部と体力維持のためのジム通いに感謝だ。 細い首筋から胸にかけて手を滑らせる。その滑らかな手触りを堪能しながら、綺麗に浮き出た鎖骨にキスをする。 両腕を陽向の体の下に差し入れて、華奢な肢体を抱き締めた。肌を合わせるのってこんなに気持ちのいいものだったか? そう思っていると陽向が背中に腕を回して抱き返してきた。 「人の肌って、本当は温かくて心地いいものなんだね・・・初めて知った」 その呟きに胸が痛む。心の中で激しく抵抗している相手と肌を合わせても不快なばかりだったのだろう。だが、これで一つ記憶のデータが上書きできたということだ。 もう一度たっぷりと陽向の唇を味わった後、首筋に唇を這わせると陽向が体を震わせ、耳朶を食むと「あ・・・ん・・・」と甘い声を漏らした。 顎から鎖骨にキスを散らせながら下降していき、桃色の印に辿り着く。 女性とはまるで違う平たい胸だが、今の俺にはこの上なく美味しそうな果実の様に映る。 そっと舌を這わせ、舐め上げ、口に含んで緩く吸うと、陽向が俺の髪に指を差し入れてきた。感じている? やがてぷくりと立ち上がった小さな尖りを舌で転がすように擦り、脇腹をさわさわと撫でると、陽向が身を捩じらせ少しのけ反るような反応を見せた。 はあはあと息が乱れ、いつの間にか征治の髪を掴んでいる手にも力が入っている。 尖りを甘噛みしながら吸うと「ああっ」と声をあげながら首をのけぞらせた。 その時、俺はある異変に気が付いた。

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