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第267話
「はあーっ」
長い息を吐くと、征治さんはもう一度僕を強く抱き込んだ。
「陽向、よかったねえ。陽向が暴れだしたときは凄く心配したけど・・・ほんとによかった」
「だけど、征治さんはつまらないどころか、やっかいだったよね・・・ごめんね。怒ってない?僕、面倒ばかり掛けちゃって申し訳ないよ」
「陽向、分かってないね。ちょっと想像力が足りないんじゃない?」
え?
「小説家のくせに、そんなことで大丈夫?」
「・・・どういうこと?」
「今、俺がどんなに嬉しいか分からない?ずっと何年も性機能障害に悩んできた恋人が、俺の腕の中で欲情して、俺の手の中でいったんだよ?これが嬉しくないわけないじゃない。
おまけにゆうべの陽向の可愛さっていったらもう・・・あれを反芻するだけで、当分間に合っちゃうぐらいだよ」
「間に合っちゃう?」
ふふふ、と笑いながら両掌を自分の胸の前でバレーボールでも抱えるようにして、指先を妖しく曲げ伸ばしする。
「ああ、もう本当に可愛かったなあ。陽向の表情も声も堪らなかったし、陽向のものもぴくぴくって・・・」
「わああー、やめて」
征治さんの両手をぎゅっと掴んで、その動きを止める。
「もう・・・朝から恥ずかしいよ・・・」
僕の慌てぶりをクスクス笑いながら見ていた征治さんは言った。
「それぐらい、俺は満足してるってこと。前に言ったの覚えてる?俺は陽向を十分な水と栄養で満たしてあげたいんだ。陽向は俺に変な気を遣わず甘えてよ。そうすれば効率よく吸収できて、きっとどんどん元気になるよ」
やっぱり征治さんは優しい。
そして、僕にとことん甘い。
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