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第269話
その夜も、ベッドに入るとすぐに甘い雰囲気になった。
ニ度目だから、少し心に余裕がある気がする。
のっけから征治さんの瞳にチラチラと浮かぶ欲に僕も煽られ、低い声で「陽向」と名を呼ばれるだけでぞくぞくしてしまう。
征治さんの手が触れてくれるどこもかしこもが気持ちよく、キス一つで脳から蕩けそうになる。
子供の頃からずっと好きだった人と初めて繋がる、特別な夜・・・
に、なるはずだった。
そのはずだったのに・・・。
あんなに僕の心も体も喜んでいたはずなのに、途中でうまくいかなくなった。
昨夜の様にパニックは起こさなかったが、僕のものが突然大人しくなってしまったのだ。
自分の体なのに訳が分からず焦る僕に、征治さんが口に含んでくれようとしたのを見て慌ててしまう。
「わっ、だめっ」
「どうして、駄目?可愛がってあげたいのに」
僕のものに手を添え、チュッとキスをしながら言う征治さんが視覚的に凄すぎて、ぎゃーと叫びそうになる。僕の股間に征治さんの顔があるだけで、もうどうにかなりそうなのに。
「でも、無理に、は、やっぱり違うかな」
そう言って引いてくれてホッとする。
「あの、僕の方は気にしないでいいから、続きを」
「いや、今夜はここまでにしよう」
えっ!? 驚いてポカンとしている僕の隣にゴロンと征治さんは横になった。
どうして?すっかり気が削がれてもり下がっちゃったのかな・・・
「えっと、前にも言ったけど僕はいけなくても嬉しいんだって。次は僕にやらせて」
征治さんのものの方へ手を伸ばしかけるが、手首を掴まれ阻止されてしまう。
「ゼッタイに駄目」
やたらと強調された「絶対」に、しゅんとなる。
実際に泣きはしないけど、心の中はベソかき状態だ。
「俺は、陽向と一緒に気持ちよくなりたいから。また、今度チャレンジしよう」
そんな・・・一度火のついた雄がそう簡単に冷静になんてならないことは、かつての経験から知っている。征治さんだけでも気持ちよくなって欲しいのに。
こんなこと、口に出したくないけど・・・
「あの、じゃあ・・・えっと・・・中に刺激を与えると勝手に反応するポイントがあるから、もしかするとうまくいくかも・・・自分でやってみるから、ちょっと向こう向いてて」
そんなこと自分で試してみたことも無いのに、なんとかしたい一心だった。
顔から火が出そうなのを我慢して思い切って言葉にしたのに、征治さんの眉間がきゅっと寄った。
「そんなの、もっと駄目」
即座に否定され、心の中はベソかきから本泣きに変わりそうになる。
「陽向、ほらこっちおいで」
征治さんが手を広げ、僕を胸に招き入れる。
「ほら、くんくんしていいから、落ち着いて」
くんくん? よくわからないが言われるままに征治さんの首に鼻を付け、征治さんの匂いを嗅いでいると、確かに気持ちが落ち着いてきた。
「陽向、何を焦ってるの?昨日、何年か振りに機能が回復したばかりだよ。すぐに上手くいかなくったっていいじゃない。そんなにへこむ必要ないよ。俺達にはたっぷり時間があるんだよ?」
そう言われてもやっぱり、へこむものはへこむ。
きっと征治さんだって期待してたはずなのに、申し訳なさすぎる。
なんで僕はいつもうまくいかない?
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